ピッチングにも驚き、降板にも驚いた。2試合連続の完全試合に向け、8回を3者連続三振で締めくくった佐々木朗が、9回のマウンドに上がらなかった。
球数は102球。最後に三振に打ち取った真っすぐは163キロ。疲れていないわけではないだろうが、まだ余力があったように感じた。
常人では理解できないし、実行できない“育成プラン”。プロ入り1年目は体作りに徹し、2年目はじっくり間隔を空けて先発させていた。そして今年は中6日で投げてはいるが、100球を超えて次のイニングを投げさせないように、徹底している。
球団の育成プランだろうが、本人も納得しているのだろう。2試合連続の完全試合がかかっていて「どうしても投げたい」と本人が直訴すれば、止められないと思う。自己管理能力というか、自制心も半端な投手ではない。
意志の強さを感じたのは6回2死、9番打者の浅間に対し0-2に追い込んだときだった。捕手のサインに首を振って真っすぐを投げた。ボールになったが、2アウトでカウント0-2。甘いところでなければ、どこに投げてもいい場面だった。たとえ、自分が納得していない球種のサインであっても、ボールゾーンに投げればいいだけ。しかし自分の投球内容と相手打者の力関係やピッチングの組み立てができているのだろう。サインを出す捕手が年下の松川とはいえ、自分の投球に徹する「強さ」を感じた。
3年目を迎える今季は、技術面でも急成長を遂げている。昨年までは右腕が振り遅れる傾向があった。腕の遅れを取り戻そうとして力み、一塁側に引っかいて投げるような腕の振りになるときがあった。だからシュート回転する真っすぐも多かった。
今試合でも8回2死、野村に1ストライクから投げた真っすぐがシュート回転してライト線にライナーの打球を打たれたが、わずかに球威が勝ってファウルでしのげた。危なかったのは、この球ぐらいだっただろう。
腕の振り遅れが矯正され、制球力もアップ。投げる方向に対し、腕が真っすぐに振れるからシュート回転もしないし、体の開きも抑えられる。
多くの投手はスピードを上げようとして力んでしまうが、制球力を追求していくことで腕も振れるようになるし、打者が球速以上にスピードを感じるボールが投げられる。力む必要がなくなり、登板後の負担も減るし、スタミナにも余裕ができる。
近年、クロスに投げた球がシュート回転する右投手は、一塁側のプレートを踏むようになる。しかし佐々木朗はずっと三塁側のプレートを踏んでいる。あくまでも打者が打ちにくい球を追求する心の強さの表れだろう。
投手として必要な資質をすべて持っている。次回の登板を想像しただけでも、ワクワクさせてくれる投手になった。(日刊スポーツ評論家)




