阪神が5連勝でついに3位に浮上した。打線は1回に4番佐藤輝が逆転の2点二塁打、3回は6月絶好調の5番大山が2ランを決めた。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(40)は2人の快打が飛び出すまでの流れに着目。2つの四球がDeNA先発浜口の攻略につながったと見た。【聞き手=佐井陽介】

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四球がもたらす影響力を再認識したゲームでした。1回は4番佐藤輝明選手が逆転2点二塁打、3回は5番大山選手が2ランを放っていますが、どちらも直前に価値ある四球が存在しています。四球が絡めば1点が複数得点になる。そんなセオリーを忘れてはいけない、ということです。

この日のDeNA先発は浜口投手。時に制球に苦しむ傾向もある相手に対して、1回1死から2番中野選手が取った四球には大きな意味がありました。中野選手は本来、早いカウントから仕掛ける、四球が少ないタイプ。その中野選手が早速四球を奪った場面から、浜口投手は徐々にリズムを崩したように感じました。

制球にやや難がある投手は特に、走者を背負うとよりコントロールを意識して、ボールが弱くなる傾向があります。そうなると当然、打者が痛打できる確率は高くなります。1回は四球の直後に3番近本選手、4番佐藤輝明選手の2連打で2得点。3回は佐藤輝明選手が2死から雑にならず四球を選んだ直後、大山選手の1発が飛び出しています。この流れは決して偶然ではなかったと考えます。

この日は1回1死一塁フルカウントで一塁走者の中野選手がスタートを切り、近本選手の遊撃手の逆を突く左前打で一、三塁にしています。安打で出塁した走者と四球の走者を比較した場合、四球で出た走者はベンチも動かしやすいものです。ただでさえ、今の阪神には1、2、3番に走れる選手がそろっています。四球出塁の選手が今まで以上に増えれば、攻撃のバリエーションはますます幅広くなるはずです。

打線の調子が上向いている今は、上位で好機をつくって大山選手ら中軸、下位で得点を奪う形が出来上がりつつあります。ただ、どの選手にも不調に陥る時期は必ず訪れます。そんな時、四球という選択肢があるかないかで、得点力は違ってきます。今後苦しい時期に「打てなかったら負け」という展開を防ぐためにも、意味のある四球をより大切にしてほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)

阪神対DeNA 1回裏阪神1死、中野は四球を選ぶ。投手は浜口(撮影・加藤哉)
阪神対DeNA 1回裏阪神1死、中野は四球を選ぶ。投手は浜口(撮影・加藤哉)