秋山の打撃は、さびついていなかった。今までメジャー帰りの一部の日本人野手に印象として感じることがあった。米国での挑戦で成長したと過度に思い込み、プライドが邪魔して相手投手を見下ろそうと逆に打席で受け身がちになること。3年ぶりに日本球界に復帰した秋山はどうか、注目していた。

初回の第1打席。球筋を見ようとスイングするそぶりもなく、2球で追い込まれた。最後はストライクゾーンぎりぎりの低めのチェンジアップに空を切り、3球三振。広島でのデビュー戦という緊張感もあっただろう。中日松葉に通算対戦で打率2割3分2厘と苦手意識もあったかもしれない。この打席は受け身になっていた。

だが第2打席で一変した。3回2死一、二塁と得点圏だったということもある。スイッチが入った。初球の外角高めの直球、2球目の外角へのカーブを見逃したが、ともに振りに行ってギリギリのコースと判断し、バットを止めていた。そして3球目のゾーン内の低めの直球をセンター前に適時打ではじき返した。

6回の第3打席も初球のカーブは狙っている球ではなかったが、上げた右足を地面に着いてからタメをつくって、タイミングを修正し、右前打。受け身にならずに自分の打撃スタイルを示していたのは、さすがだ。

8回の第4打席は根尾に152キロの内角直球で詰まらされた。秋山は右足を踏み込んでいくタイプで、唯一、弱いコースになる。今後、徹底的に攻められる時期もあるかもしれないが、広いヒットゾーンを持っており、必要以上に意識することもない。

西川が離脱中で、菊池涼が代役を務めてきたが、3番にしては出塁率が低い。本来の2番に戻すため、秋山が3番に入った。だが西武時代に打席数の差はあるものの、1番で3割2分1厘、3番で2割7分5厘と5分近く打率が違うように、1番のリズムが合うタイプ。西川が復帰してきた時に、また新たな打順で組み直すことができる。

米国では苦しんだが、何も心配する必要はない。体調次第だけで、広島には大きな戦力になる。(日刊スポーツ評論家)

中日対広島 3回表広島2死一、二塁、秋山は中前適時打を放つ。投手は松葉(撮影・森本幸一)
中日対広島 3回表広島2死一、二塁、秋山は中前適時打を放つ。投手は松葉(撮影・森本幸一)