これぞ「4番の仕事」という見事な一発だった。0-0の投手戦で迎えた7回表無死一塁、内角低めのフォークボールを中田がすくい上げた。難しい球を仕留めたというだけでなく、ここまで1安打ピッチングをしていた西純から放った決勝2ランだった。

「心技体」が整ったベテランらしい1発だった。前の打席はフォークを見逃しストライク、真っすぐをファウルした後、低めの真っすぐを空振りし、3球三振に打ち取られていた。走者のいない状況ながら、マウンドの西純はガッツポーズ。腹も立っただろうし、仕留められた真っすぐへの意識も高まっていたはずだった。

冷静さを失っていなかった。先頭打者の丸が四球で、代走に増田大が送られた。この状況で阪神バッテリーは盗塁をされたくないだろうし、四球はストレートのフォアボール。自然に考えれば真っすぐを狙いたくなる。しかし、プロの世界では、このようなみえみえのパターンは「逆の攻め」が多くなる。変化球へのマークも忘れていなかった。

内角低めの難しいコースだったが、左肘を抜くようにしてすくい上げた。それほど強振していないが、飛距離は十分。持ち前のパワーを見せつけた。

7月に入って調子を上げてきた中田だが、明らかに打撃フォームが変わっている。昨年までは極端に踏み込んで打ちにいくため、内角の速い球に対していつも差し込まれていたが、オープン気味のスタンスから左足をオープン気味に踏み込んで打ちにいけている。こうなると上体の突っ込みが抑えられるし、ボールとの距離も取れるようになる。

ショートゴロに打ち取られた第1打席も内角高めの真っすぐに対しても、バットのヘッドを返さず「縦振りスイング」ができていた。これまでのように踏み込んで打ちにいっていたら、どん詰まりのショートゴロになっていただろう。しかし今の中田は「紙一重」の凡打になっていた。

先発した赤星も、春先の元気のいいピッチングが戻っていた。まだ、左打者への内角の真っすぐが甘くはいるケースがあったが、右打者に使う外角の真っすぐの精度はまずまずだった。

じっくりと間隔を空けて先発起用し、今試合のように100球に達する前に降板させれば、そこそこの結果は残していけそうなピッチングだった。

3位の阪神に対し、5位の巨人が2勝1分け。セ・リーグの3位争いはますます目が離せなくなった。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 ヒーローインタビュー後、ガッツポーズで記念撮影する赤星(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 ヒーローインタビュー後、ガッツポーズで記念撮影する赤星(撮影・狩俣裕三)