3位争いとはいえ、巨人-阪神の伝統の一戦は緊張感が漂う僅差のゲームになった。そんな中、巨人はプレッシャーをはねのけて勝利し、阪神は悔やまれる黒星を喫した。

勝負を分けたのは7回表無死一、二塁からの梅野の打席だった。2点ビハインドで、送りバントはセオリーの戦術。ただ、三塁はフォースアウトになるだけに、送りバントといってもプレッシャーがかかる場面だった。

初球は高めの直球をバントしてファウル。2球目は見逃しボールになったが、3球目も外角のスライダーをファウルして追い込まれてしまった。送りバントがうまいだけに、梅野にスリーバントをさせるのは仕方ないと思う。ただ、想定外の球に対して、対応できなかった。

追い込まれてからのバントなら、フェアグラウンドに転がさなければならない。巨人バッテリーは簡単にバントされるような球は投げてこないだろうという予想はできる。内角寄りの高めの真っすぐと、外角低めへの変化球がもっとも警戒する球。しかし戸郷のフォークボールは高めのストライクゾーンに抜けてしまった。

高めに浮いた変化球は、もっともバントしやすい球種。しかしスリーバントでフェアゾーンに転がさなければいけない意識が強くなりすぎ、バントしやすい球が逆に裏目に出た。投手前に強めのゴロが転がり、三塁はアウトになった。

先発の西勇も、落とし穴にはまった。5回裏無死三塁から2アウトを取ってホッとしたのだろう。吉川への初球、外角のスライダーを同点タイムリーにされた。6回裏1死から中田に打たれた決勝ソロも、外角を狙って投げた真っすぐがシュート回転して甘く入ったもの。決め球でもあるツーシームやフォークの失投なら仕方ないが、吉川へは初球で、中田は1ストライクからの2球目。得意でない球で、勝負を焦り過ぎてしまった。

一方の巨人は1点差に詰め寄られた7回表1死一、二塁カウント1-2、戸郷は代打ロハスに対して内角への直球でサードフライに打ち取った。2死からはリリーフの高梨が中野に対し、カウント2-2から内角の真っすぐでショートフライに打ち取った。ヒットで同点、本塁打が出れば逆転の場面で、しっかりと内角を攻められていた。

2回の先制のホームランを放った佐藤輝は、ベンチに帰って矢野監督からメダルをかけてもらっていた。このパフォーマンスを喜ぶファンもいるのだろうが、負けられない試合で、伝統の一戦も今季の最終戦。個人的には違和感を覚えた。私が古い人間だからかもしれないが、ふざけているようにしか思えない。プロならプレーでファンを楽しませるべき。しびれる試合の勝負どころで、こういった差が出たのだと思う。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 7回表阪神無死一、二塁、送りバントを失敗する梅野。投手戸郷(撮影・江口和貴)
巨人対阪神 7回表阪神無死一、二塁、送りバントを失敗する梅野。投手戸郷(撮影・江口和貴)
巨人対阪神 2回表阪神2死、先制ソロ本塁打を放った佐藤輝(手前)にメダルをかける矢野監督(撮影・狩俣裕三)
巨人対阪神 2回表阪神2死、先制ソロ本塁打を放った佐藤輝(手前)にメダルをかける矢野監督(撮影・狩俣裕三)