これぞプロ野球という、劇的なパ・リーグのペナントレースになった。オリックスの逆転優勝は見事だった。かたやソフトバンクは優勝マジック1にこぎつけながら、土壇場で西武、ロッテに連敗を喫した。

ソフトバンクには追い上げられるプレッシャーがかかったはずだ。特に厳しい場面で、経験の浅い若手がばたついた感が強い。そして、最終局面で優勝の決め手、明暗を分けたのは継投だった。

オリックスは4回、楽天に先制されたが2点で止めることができた。5回にひっくり返すと、盤石のリレーで反撃を許さず。先発はそろっているが、今季の無理をさせないリリーフ起用は中島監督と投手コーチのコミュニケーションがうまく取れていたからだろう。

オリックスの連覇は1年前と中身が違う。投打とも各自が力をつけ、それが全体的な戦力層の厚さにつながった。春先から故障、コロナで複数の離脱者が出ても、だれかがカバーした。それは主砲の杉本を欠いてもクリーンアップを組めたことにも表れた。

攻撃面では吉田正の夏場からの勝負強い働きは素晴らしかった。9月度の4割超の月間打率が示したように、吉田正がシーズン終盤の激しい優勝争いを演じるチームをけん引したのは頼もしかった。

そして中嶋監督の采配で興味深かったのは、選手起用に“こだわり”がないことだった。敗戦処理の場面にも、勝ちゲームに投入するピッチャーを使うなど、相手チームに考えさせるかのような起用をみせた。

抑えだけは平野佳を固定し、それ以外はフレキシブルな起用を続けた。そうしたセオリーにない継投は、数多い場面で見受けられた。相手チームからすれば簡単ではなかったはずで、オリックスの粘り強い戦いには、中嶋監督の“したたかさ”がにじんだ。(日刊スポーツ評論家)

楽天対オリックス 優勝を決め胴上げされるオリックス中嶋監督(撮影・滝沢徹郎)
楽天対オリックス 優勝を決め胴上げされるオリックス中嶋監督(撮影・滝沢徹郎)
楽天対オリックス 4回裏楽天無死一、二塁、炭谷に四球を与え、降板となる田嶋(左端)(撮影・前田充)
楽天対オリックス 4回裏楽天無死一、二塁、炭谷に四球を与え、降板となる田嶋(左端)(撮影・前田充)
楽天対オリックス 7回裏楽天2死、辰己(奥左)を左飛に仕留めグラブをたたく山崎颯(撮影・滝沢徹郎)
楽天対オリックス 7回裏楽天2死、辰己(奥左)を左飛に仕留めグラブをたたく山崎颯(撮影・滝沢徹郎)