日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(41)が、今春オープン戦初アーチを放った5番佐藤輝明内野手(24)の打席内容を高評価した。右越え本塁打を放った打席の道中、ヤクルトバッテリーとの駆け引きに注目。「昨季までと比べて進化の跡が見える」と納得した。【聞き手=佐井陽介】
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結果論ではなく、佐藤輝選手の打席内容に昨季までとの違いを感じました。小川投手からオープン戦初本塁打を放った3回1死の2打席目。ヤクルトバッテリーは2球連続で「あれっ?」と戸惑いを覚えたのではないでしょうか。
この打席、佐藤輝選手は1ボール1ストライクから3球目のチェンジアップを一塁線に引っ張っています。やや甘く入った低めのボールに対して、体全体を回転させてのファウル。この反応を確認して、ヤクルトバッテリーは「次も同じボールをいいところに沈ませれば大丈夫」と感じたことでしょう。実際、内山捕手は1ボール2ストライクから外角低めのチェンジアップを選択。ただ、佐藤輝選手はここから2球連続で相手バッテリーの上を行くことになります。
4球目。佐藤輝選手はほぼ要求通りに投じられた外角低めのチェンジアップに、今度は体を全く回転させずに対応。上半身、下半身ともに三塁側を向かせたまま、左方向にファウルで逃げています。この時点でヤクルトバッテリーには「あれっ? 空振りを取れるはずだったのに」と誤算が生まれ、同時に「そうか、変化球に意識があるのか」とも考えたはずです。だから5球目には内角直球を選択し、詰まらせにかかったのだと思います。
にもかかわらず、佐藤輝選手は内角直球を完璧にとらえ、右翼席中段まで大飛球を運びました。ヤクルト側はまた「あれっ、変化球意識じゃなかったのか」と戸惑ったのではないでしょうか。昨季までの佐藤輝選手であれば、4球目のチェンジアップで空振り三振、もしくは5球目の内角直球で詰まらされる可能性が高かったような気がします。配球を読んだ結果なのか、ただ単に反応できたのか、それは本人にしか分かりません。ただ、どちらにせよ、本塁打までの道中の内容には進化の跡が見えます。(日刊スポーツ評論家)