まだ4年目で、規定投球回にも達したことがない。そんな佐々木朗が日本球界を代表する投手と言われるゆえんが、今試合の投球を見ればはっきりと分かる。6イニングでわずか80球。それなのに11奪三振をマーク。こんなピッチングをできる投手は佐々木朗以外には考えられない。

唯一、攻略の糸口といえば、それほど多くの球数が投げられないという点。この手の好投手の場合、一般的には追い込まれるまで球種やコースを絞る。そして追い込まれてからはとにかく粘る。狙っていない球を打ちにいって、たった1球で凡打になるのを避け、狙っていない球はボールになればラッキーというスタイル。しかし、佐々木朗には“もうひと工夫”を加えなければいけないだろう。

11奪三振の内容を振り返れば、並の攻略法が通用しないのが分かる。直球での空振り三振は2回のマルティネスだけ。11奪三振のうち、10個が低めのフォークで空振りさせた三振だった。要するに追い込まれる前までは狙い球を絞れても「追い込まれてからとにかく粘る」は不可能に近い。

ではどうするのか? 追い込まれて、低めのフォークにバットが止まらないのは、真っすぐの見逃し三振を嫌がるからだろう。それならせめて低めの真っすぐを捨てるしかないと思う。

打者の本能と言っていいが、真っすぐの見逃し三振ほど嫌なものはない。それならベンチから「低めの真っすぐは見逃し三振してもいい。とにかく低めの球に手を出すな」と明確に伝える必要がある。もちろんうまくいくとは限らないが、10三振した低めのフォークが見逃せれば、結果は変わっていたかもしれない。

お手本になるのは万波の第1打席だろう。カウント2-2に追い込まれた7球目、低めのフォークを見逃してボールになった。そしてフルカウントになった9球目を軽打して中前打。高めの直球はボールゾーンでも打ちにいっていたように、高めを狙っていたのだろう。三振を恐れず、低めを捨てる勇気があった。

ただその万波も、第2打席は低めのフォークを空振り三振。2球目の高めの真っすぐを見逃していたように、第1打席でヒットしたため、通常のスタイルに戻したのだろう。4番の野村は第1打席も第2打席も高めの真っすぐを見逃して低めのフォークを空振り。いい打者であっても、通常のスタイルで佐々木朗は打てないことを証明している。

どんな作戦を立てても、大量得点は難しいだろう。それでも能力任せで打っても打てないのだから、チームとして戦略を徹底するしかない。そして無駄な点をやらないこと。けん制悪送球で失点を招いているようでは、佐々木朗を相手に勝ち星を奪えないだろう。(日刊スポーツ評論家)