阪神は今季初登板の伊藤将司投手(26)で、巨人は今季2戦目の山崎伊織投手(24)が先発した。どちらも開幕には不在で出遅れたが、今季の飛躍が期待されている。今後の戦いで、重要なカギを握る若手投手の対決といっていいだろう。

結果は伊藤将の圧勝だった。9回を無失点に抑えた伊藤将に対し、山崎伊は2回1/3で8失点。投げている真っすぐの球質を比べると、どちらもシュート回転しやすいタイプだが、投球内容では歴然とした差があった。自らの特性を知っている伊藤将に比べ、山崎伊はまったくといっていいほど理解しているように思えなかった。その差が出た。

簡単に言うと、左腕の伊藤将は右打者に対して外角中心の組み立てだった。ストライクがほしいときは、大胆に外角からストライクゾーンに曲がるカットやチェンジアップが多い。勝負どころで右打者の内角へ真っすぐで攻めるときは、シュート回転して甘くならないようカット軌道になるようにボールゾーン気味に投げていたように見えた。

一方の右腕山崎伊は、左打者の内角と右打者の外角へ狙って投げた球が、ことごとく甘く入った。本来、右打者には内角のシュートで攻めるタイプ。それなのに2回1死一塁から右打者の井上に内角のシュートを狙い打ちされた以外は、すべて外角球が甘く入ったもの。左打者に対しても、3回無死満塁から佐藤輝に外角の真っすぐをバットを折りながらセカンドの内野安打になった以外は、内角を狙った球が甘く入っていた。7安打中、5本が対角線上に投げるクロスの球が甘く入ったものだった。

もちろん、伊藤将の持ち味を引き出した捕手の坂本のリードは見事だった。それに対し、山崎伊をリードした大城卓は甘くなりやすい球を要求しすぎて持ち味を発揮させられなかった。しかし逆球とは言わないまでも、これだけ右打者の外角球と左打者の内角球が甘くなるのは、ピッチャーの責任が大きいと言うしかないだろう。

仮に右打者に投げるシュートの比重と精度を上げれば、外角に投げた球が多少、甘くなっても打ち損じを誘える確率が増すだろう。まずは自分の投球の特性を知り、それを生かせるように投げるにはどうしたらいいか考えるべき。そして苦手にしている右打者の外角と左打者の内角への投げミスを減らすための方法を考える。左右で対称になるが、伊藤将にはそれができていた。それが結果となって表れた試合だった。(日刊スポーツ評論家)