DeNAは今季3勝負けなしで防御率0・64の東が先発した。まだペナント序盤戦とはいえ、9日の試合でバウアーがノックアウトされて敗戦しているだけに、好調な左腕で連敗をストップさせたかっただろう。しかし期待された東は、調子がいいときに気をつけないといけない“落とし穴”にはまってしまった。

東はここまで4試合に先発して28イニングを投げており、四死球は0。数字を見る限り、ドンドンとストライクを投げて勝負してきた証しだろう。しかし、積極的にストライクを取りにくるピッチングが、巨人打線の餌食になった。

先制点を与えた2回は、悔やまれる失点だった。2死二塁から打席は8番ブリンソンに1ボールから外角低めのカーブをレフト前タイムリーにされた。難しいコースではあったが、外国人選手のファーストストライクで、次打者は投手の山崎伊だった。「歩かせてもいい」という考えが、もっと強くてよかった。

4回も連続三振で2死を取りながら、ブリンソンには前の打席と同じ1ボールから右中間に二塁打を打たれた。9番の山崎伊には2ストライクからの4球目、キャッチャーは外角へ外し気味に構えていたが、バットの先で拾われて一、三塁とピンチを広げ、続く吉川にタイムリーを浴びた。

簡単にいうとストライクをそろえすぎてしまった。初回の巨人の攻撃を見ても、無死一塁から丸(右前安打)、坂本(中飛)、岡本和(遊ゴロ併殺)は初球を打っている。東がここまで四球を出さず、積極的にストライクを取りにいっているデータを踏まえての攻撃だろう。東は5回を投げて10安打4失点だが、球数は82球。打たれている割には球数が少ない。巨人の攻略法にはまってしまった。

東の投げている球そのものは、勝てるピッチャーだと思うようなキレがあった。ストライクゾーンへ積極的に投げ込んでいくスタイルは私も同じだった。決して間違っているわけではないし、慎重になりすぎて自滅するよりはよっぽどいい。

それでも勝負事には相手がいる。どういう攻め方をしてくるのかをバッテリーで嗅ぎ分ける「嗅覚」は大事。もちろん、積極的にストライクを取りにいくスタイルは崩す必要はないが、先取点を奪われそうなピンチや走者を背負った場面などは、一工夫があっていい。次の対戦相手は、今試合を参考にしてくるだろう。今回の反省を生かせるようなピッチングを期待したい。(日刊スポーツ評論家)