元近鉄、日本ハム、楽天監督で、日刊スポーツ評論家の梨田昌孝氏(69)が甲子園で試合をチェック。1点リードの9回に同点、勝ち越しの2発を浴びて敗れた守護神の湯浅京己投手(23)の状態について、岡田監督が示唆した2軍降格は「賢明な判断」と指摘した。その上で、4回に本塁で憤死するなどした佐藤輝明内野手(24)の記録に残らない“2つの走塁ミス”についても厳しく分析しました。【聞き手=松井清員】

   ◇   ◇   ◇   

9回に2発を浴びて敗れた湯浅の状態に加えて、もう1点、佐藤輝の走塁で気になったことがあった。0-0の4回無死一、二塁で、前川が放った中前打を中堅手がファンブルし、その間に先制の1点が入った。この時に一塁走者の佐藤輝も三塁に進んだが、中堅からの送球にスライディングせず、危うくタッチアウトになりかけた。三塁のランナーコーチは、二塁走者の大山を生還させることに集中していたので、ほとんどアシストできない。佐藤輝にとっては、どこに送球されているか分からない“後ろのプレー”だっただけに、より確実さが求められる。送球が重なって三塁手と交錯していれば、故障にもつながる可能性もあった。

野球はメンタルが左右する部分も大きい。恐らく、スライディングしなかった佐藤輝も、しまった、危なかったと感じたと思う。それが梅野が講じたセフティースクイズでの本塁憤死につながったように映った。阪神ベンチは先制点を入れてなお無死一、三塁で間髪入れず、相手が動揺しているスキを狙って初球に仕掛けた。梅野の打球は一塁方向に転がり、山岡がグラブトスでアウトにする離れ業をやってのけた。難しい体勢から低く素早くピンポイントで送球するビッグプレーだった。

でもこの時、佐藤輝のスタートが遅れていた。直前に走塁面でミスがあると、いろいろ考えてしまってなかなか良いスタートは切れないもの。本来ならセーフになってもいい場面だったし、ほんのコンマ何秒の瞬時の判断が、アウトセーフの明暗を分けた。その後、投手の伊藤将がタイムリーを打って何とか勝ち越したが、もし佐藤輝がセーフなら、リードは1点ではなく、2点、もっと広がっていたかもしれない。9回1点差で湯浅という状況ではなかったかもしれない。野球は打つ守るだけではない。走塁も1つ1つやるべきことをしっかりやっていくことが、得点や勝ちにつながっていく。どうしても湯浅での逆転負けに目がいくが、しっかりとかぶとを締め直してほしい。