85年阪神日本一監督・吉田義男氏(89=日刊スポーツ客員評論家)が21日、18年ぶりの悲願に“平常心のススメ”を説いた。師弟関係にある岡田彰布監督(65)の手腕を高く評価した上で「勝負は8月」と後押し。26日に90歳を迎える同氏がDeNAとの直接対決がポイントとしながら「もっとも“アレ”に近い」とゲキを飛ばした。【取材・構成=寺尾博和編集委員】
◇ ◇ ◇
長いことプロ野球界でお世話になって“卒寿”を迎えることができました。あくまでも通過点です。来年甲子園球場が“百歳”なので、わたしより先輩ですわ(笑い)。
お祝いは“アレ”をしてからで結構です。ここから阪神に大切なのは、“平常心”で戦い抜くことです。勝負は8月。対DeNAの8試合がポイント、うちビジターの6試合を勝ちきりたい。
DeNAからみたキーマンは、外国人投手のバウアーです。阪神は左の今永とともに攻略に努めたい。今は混戦ですが、広島はめいっぱい、巨人も決め手に欠きます。
いやがおうでも盛り上がるだろうが、浮かれることなく、普段通りの心を保ちながら戦いたい。当たり前を当たり前にするのは容易ではない。今まで挑んできた野球を貫くことです。
開幕直後は「独走では?」との声もあったが、わたし自身は混戦と読んだ。前回の岡田が率いて優勝した05年のチームと比較しても安定感があるとは思えなかったからです。
そこを岡田がブランクを感じさせない手腕を発揮し、勝利をもたらした。監督がもっとも目立った前半戦だったのと違いますか。後半戦はコーチの役割、力量も問われます。
岡田は“攻め”の監督で、センターラインに重点を置くチーム作りが奏功した。村上、大竹が先発をけん引し、リリーフに流れをつくったように、投手を中心にした守りの野球です。
その意味では、安藤、久保田(両投手コーチ)は評価したい。湯浅も1年前のようにはいかず、外国人は期待外れ。ただここで青柳が復帰してきたのは心強いです。
中野の二塁転向もファインプレーです。ステップを踏むことが多かった遊撃と違い、ワンピースで送球するポジションにはまった。菊池(広島)、牧(DeNA)、吉川尚(巨人)ら二塁手の上達はうれしい。木浪との二遊間コンビには成長を感じました。
監督がノイジー、佐藤輝、それと失敗した投手に再びチャンスを与えたのは、選手との信頼関係が大事なことを身をもって知っているからでしょう。「辛抱ならん」と口を突いても我慢の起用をしたように映りました。
問題は打力で、やはりカギは佐藤輝。一塁大山とともに三塁に固定されたが、フィールディングは動きが鈍いです。打撃も何かにこだわり過ぎるのかもしれないが、殻を破ってほしいです。近本復帰でチームの得点力アップは中軸にかかってくる。
平常心と言ったのは、監督で日本一になった1985年の経験則があるからです。あの年も山あり谷ありでしたが、8月12日に起きた日航機墜落事故で搭乗していた中埜肇社長が巻き込まれたことに衝撃を受けて激しく動揺しました。
冷静に努めようとするが、どうふるまったらいいのか答えが見つからなかった。当時の選手会長が岡田で、わたし自身は絶対に「優勝」の二文字を言葉にすることなく、ひたすら平常心で戦う覚悟を決めたものです。
ここからはあっという間ですよ。まずは22日からのヤクルト戦で全力を尽くしたい。ヒーローが現れることを熱望します。信念を秘めて戦ってほしい。もっとも“アレ”に近いのが阪神であることは間違いありませんわ。




