阪神、広島ともに攻撃面のミスもなく、大竹、床田の両先発左腕投手が丁寧に投げて、がっぷり四つに組んだ見応えのある好試合だった。
差が出たのはリリーフ陣だ。7回に連続四球で押し出しに至った広島矢崎は、阪神ファンで埋め尽くされた甲子園のスタンドの雰囲気にのまれたように見えた。普段からテンポの良い投手ではあるが、より一層セットが速くなり、投げ急いでいるように感じた。球威で勝負するため制球抜群というタイプではないが、あれだけ高めに抜けて、連続四球を与えるほどコントロールは悪くない。体調不良で、久々の登板となった影響があったかもしれない。
阪神のリリーフ陣は、本当に駒がそろっていた。3試合すべて広島に先制されたが、救援陣が流れを渡さないことが、逆転につながったと言える。この日も5回で好投の大竹から、すっぱりと桐敷へとつないだ。5回裏に味方打線が3者凡退で嫌な流れになりそうなところ、桐敷は6回に相手を3者凡退させ、流れを再び引き寄せた。元々先発をやっていてスタミナがあり、イニングまたぎをさせられるのも大きい。岩貞、石井、島本で8回を乗り切り、9回にクローザー岩崎。質、量ともに救援陣は豊富で、投手力で勝ち抜いた、シーズン同様の戦い方を徹底できていた。
敗れた広島も力を出し切ったと言える。矢崎は今季、抑えで登板するなど経験を積んでいた。久々の登板にはなったが、下位から上位につながる勝負どころ。7回の投入自体には不思議はなかった。チームには若い選手が多く、緊迫感のある試合を経験したことで、来季への糧となるはずだ。
阪神は投打に隙がない野球ができているため、日本シリーズが非常に楽しみになった。打線は送るべきところはしっかり送り、リリーフは左右のバランスも取れて、万全といえる布陣。僅差の試合が続く、見応えのある日本シリーズになる予感がする。(日刊スポーツ評論家)