阪神が劇的なサヨナラ勝ちで2勝2敗のタイに戻した。3-3の9回1死から近本が四球で出て2暴投で三塁に進むと、2者連続の申告敬遠で満塁。最後は大山が三遊間を破った。

日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(42)は「4番大山勝負」を巡るオリックスベンチの思惑、サヨナラ打という結果が持つ意味を語った。

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3-3の同点で迎えた9回裏、オリックス中嶋監督は阪神4番大山選手との勝負を選択しました。1死一塁から2つの暴投で1死三塁フルカウントとなると、オリックスベンチは2番中野選手を申告敬遠。それどころか3番森下選手も迷わず申告敬遠して、1死満塁での4番勝負をチョイスしました。この決断はもしかしたら日本シリーズの先も見据えた上での判断だったのかもしれません。

いくら塁を埋めて守りやすくするといっても、マウンド上にいたのは四球を与えてしまう可能性もあるワゲスパック投手です。押し出し四球のリスクもある中であえて塁を埋めたのは、「ここで抑えれば、大山選手の今後の日本シリーズに向けてダメージを与えられる」という計算もあったのではないでしょうか。

3戦目までの大山選手は痛烈な当たりが好捕される不運もあって、調子が上がっていませんでした。仮にこの日の9回裏1死満塁で併殺打などに倒れていれば、4番のプライドがズタズタになってしまっていたかもしれません。そんな状況だったからこそ、大山選手が押し出し四球ではなく打ってサヨナラ勝利を決められたという事実は、大山選手個人だけでなくチーム全体にとっても大きな価値を持つと考えます。

打線全体を見れば、1番近本選手から2番中野選手、3番森下選手の3人がつながりを取り戻しつつある一方で、5、6番を任される佐藤輝選手に当たりが戻っていません。そう考えると4番の大山選手は打線を線にするか点にするかという観点で、両チームにとって今後の日本シリーズの行方を左右するキーマンの1人に違いありません。この日のサヨナラ打で4番大山選手は完全に息を吹き返した形です。2勝2敗のタイに戻した阪神にとって、これ以上の朗報はないはずです。(日刊スポーツ評論家)