中日の北谷キャンプに到着した時は雨がパラついていた。シート打撃はメイン球場で行うとスタッフに伝えられたので、スタンドで少し待っていた。

中日を取材するテーマははっきりしていた。梅津晃大投手(27)の復調はチャンスがあればこの目でまた確認したいところだが、野手について言えば二遊間の競争になると考えはまとまっていた。

投手陣は強力。しかし、打力が足りず、ずっと苦戦が続いている。二遊間に新戦力が出てきて、得点につながる打線が組めれば、中日のこれまでの不完全燃焼の戦い方は風向きが変わる。それだけ今の中日の二遊間は重要なポイントだ。

シート打撃で最初にショートについたのがルーキー津田啓史内野手(21=三菱重工East)。最初の打者のゴロを捕球するも一塁への送球は低投でワンバウンドとなった。続いて守備についたこちらもルーキー辻本倫太郎内野手(22=仙台大)は、イニング間の練習で一塁へワンバウンド送球。

私には2人とも雑にプレーしているようには見えなかった。むしろ丁寧に捕球する動きまでは、しっかり捕球しようという意識は感じ取れた。だが、野手は一塁に正確に投げてアウトにしてこそプレーは成立する。肝心の送球に安定感が欠けては元も子もない。

三塁側でサイドノックを受けていた2人の動きは、悪くない。しっかり足を使っており、捕球に入るタイミングも合っている。この確実さを送球まで通して再現すれば、ある程度のレベルで競い合うことができる。

中日は2年目田中幹也(23)、村松開人(23)、福永裕基(27)、オルランド・カリステ(32)と続けて内野手を補強している。そして今年の津田、辻本が加わり、若い力で何とかセンターラインを構築したい狙いが見える。先述したように、丁寧にいこうとすることで、送球にブレが生じるのならば、思い切ってプレーにトライしてもいいと感じる。

このシート打撃ではもう一つ、気になる選手がいた。3年目ブライト健太外野手(24)だ。根尾昂投手(23)のボールに食らい付き、粘っていた。それも右打ちで何とか食い下がろうとしている狙いは見える。しかし、見ているとボールをひきつけて右打ちしているのだが、カット狙いでスイングしているようで、慌ただしい。

本来、ブライトの魅力は長打力にあると理解している。状況に応じて右打ちで粘ろう、粘る中で四球を奪おうという意図は感じる。昨年の阪神は四球を選ぶことでチャンスを創出してきた。ブライトなりにそうした出塁も頭に入れているのだろう。

それにしてもちょっとせわしない右打ちだなと、頭の中で思いを巡らせていると、午後のフリーバッティングでブライトが登場した。どういう意識で打っているのかじっくり見たが、ほぼ9割以上右方向へ打っていた。それも、ゆったりとした構えから、しっかり右方向へ運んでいた。

実戦で付け焼き刃的に追い込まれたから右打ちをしているからせわしないのかな、と感じていただけに、そこは予想と違った。これだけゆったりと、自分のタイミングで右打ちできるのなら、あのシート打撃でもこの練習を再現すれば、もっと魅力が出てくる。

せっかく右打ちの技術を習得中なのだから、それは実戦形式の中できっちり形として見せてほしい。もちろん、ブライトには右打ちだけでなく、しっかり引っ張るバッティングも磨いてほしい。若く、パワーも備えている。引っ張る力強いスイングも首脳陣から期待されているはずだ。

最後に、シート打撃に登板した根尾に注目した。打者7人に対して村松のセンター前ヒットの1安打という内容だった。投手転向した根尾のボールを直に見るのは初めてだったが、自分のフォームで投げており、ストライク先行していた。

ボールから入ったケースでも、慌てずにストライクが取れていた。変化球もまずまず制球されており、私の印象ではしっかり勝負できているなというものだった。さらに、すぐにブルペンに移動してフォームを確認していた。いい時も悪い時も、必ず登板の後にブルペンに入ってチェックしていると聞いた。根尾の意識の高さを体現する姿勢と言える。

ブルペンでのピッチングも見たが、躍動感がある。投げ終わった時、打席の方へ体が弾んでいく様は、体全体を使って投げるダイナミックさが出ており、迫力もあった。元来が真面目な選手と聞いている。体の使い方をひとつずつ確認しながら投げ込む姿勢は、向上心にあふれていた。

立浪監督は2年連続最下位、与田前監督時代を含めると3年連続Bクラスと低迷している。それでも、強力な投手陣がいるチームには、打線や守備力がひとつでもはまれば一気に上位に浮上する潜在力がある。北谷のキャンプで、課題克服へチーム全体が取り組んでいることはしっかり伝わってきた。(日刊スポーツ評論家)