それでも虎のブルペン陣は層が厚い。日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(42)が10日、オープン戦開幕9連敗を喫した古巣阪神に「泰然自若」を求めた。

中継ぎ陣が不安を露呈し始めている中、この日の巨人戦(甲子園)ではドラフト5位石黒佑弥投手(22=JR西日本)が1回を完全投球。誰かが調子を落としても代役が台頭する土壌があると強調し、9連敗にも「慌てる必要はない」と力を込めた。【聞き手=佐井陽介】

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周囲は少しザワつき始めていますが、そうは言っても阪神の中継ぎ陣は層が厚いと感じます。前日9日ヤクルト戦では岩貞投手が1イニングを3四死球で3失点。岡田監督はブルペン陣の再編成もにおわせたそうですが、個人的にはそれほど心配してはいません。誰かが調子を落としたら誰かがポジションを奪いにかかる。そんなハイレベルな競争原理が今のチームに根付いているからです。

ブルペンデーで先発した岡留投手はひそかに注目していた投手の1人です。キャンプ初日のブルペン。ベース板での直球の強さを感じたのが村上投手、門別投手、そして岡留投手の3人でした。この日は2回を無失点。特に右打者の内角への直球に強さがありました。ただストライクゾーンに投げ込むだけではなく、「インコースで詰まらせてやろう」といった意図も感じられた内容。今季は一気に勝ちパターンも任せられるのではないでしょうか。

一方、ドラフト5位ルーキー石黒投手のオープン戦初登板にも目を見張るモノがありました。1イニング完全投球の結果もさることながら、注目したのは打者の反応です。2死から空振り三振を奪った場面。巨人萩尾選手が外角低めに大きく外れたフォークを振らされたのには、おそらく理由があります。この日最速150キロの直球が数字以上に速く感じて、タイミングを速めに取っていたため、抜き球についバットが出てしまったのだと想像します。

新入団選手紹介を終えた直後の甲子園巨人戦。石黒投手、ドラフト6位津田投手の登板に関してはおそらく「大観衆の雰囲気を味わわせてあげよう」という岡田監督の“親心”もあったのだと思います。石黒投手はこのチャンスを逃さなかったから立派です。フォームにひと癖あり、打者のタイミングをワンテンポずらせるスタイル。1軍ブルペン枠争いに割り込める投手がまた1人増えた形です。

チームはこれで9連敗となりましたが、あくまで勝敗度外視のオープン戦に過ぎません。中継ぎ陣にしても、誰かが調子を落とせばすぐさま代役が台頭してくるだけの陣容はそろっています。まだ開幕日は2週間以上も先。慌てる必要はないと考えます。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 6回、4番手で登板した阪神石黒(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 6回、4番手で登板した阪神石黒(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 6回を3者凡退に抑えベンチに戻る阪神石黒(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 6回を3者凡退に抑えベンチに戻る阪神石黒(撮影・藤尾明華)
阪神対巨人 6回表巨人1死、石黒は増田の打球に飛びつき投ゴロに打ち取る(撮影・上田博志)
阪神対巨人 6回表巨人1死、石黒は増田の打球に飛びつき投ゴロに打ち取る(撮影・上田博志)