8回表、ヒヤリとする場面がありました。1死走者なしから阪神の4番・佐藤輝選手が打席に入った場面。広島の左腕ハーン投手が2ストライクから投じた150キロ直球がすっぽ抜けて、佐藤輝選手の上半身に向かったのです。佐藤輝選手は間一髪でよけましたが、外角に構えていた捕手が捕球できなかったぐらいの逆球。もし死球になっていたらと想像しただけでゾッとします。この場面、佐藤輝選手はバットを落としたあと、一瞬だけ投手の方向に歩きかけましたが、すぐに体の向きを変えました。ここでグッと怒りをこらえた佐藤輝選手の対応に立派だと感じました。

阪神打線は前日、広島投手陣から3度の死球を受けました。大山選手が1度、前川選手が2度。前川選手はこの日、右肩甲骨の骨折で登録を抹消されました。振り返れば、4月にも近本選手が広島戦で左手首に死球を受けて骨折しています。ここまで死球が目立つと、首脳陣、選手ともに黙って見過ごすわけにはいきません。一方で、打者の立場からすれば、際どいボールのたびにメンタルを乱すわけにもいきません。相手にジャブは入れつつ、少なくとも打席の最中は冷静さを保たなければならない。佐藤輝選手の立ち振る舞いからは、そんな主砲ならではの矜持を感じました。

阪神打線にはリーグ屈指の強打者が揃っています。これからも相手バッテリーは果敢に内角を攻めてくることでしょう。そんな状況で死球による負傷を防ぐために打者ができることは、甘く入った内角球を打ち続ける、よける技術を磨く、時に感情をあらわにする、ぐらいしかありません。その点、佐藤輝選手はそれらの全てを兼ね備えているから、あれだけのスラッガーなのに昨季0死球、今季もここまで0死球の数字を残せているのでしょう。代えの効かない存在だけに、願わくば今季も0死球のままシーズンを乗り切ってほしいものです。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 8回表阪神1死、内角球を避けた佐藤輝明はバットを投げてテイラー・ハーンの方に向かうとする(撮影・上田博志)
広島対阪神 8回表阪神1死、内角球を避けた佐藤輝明はバットを投げてテイラー・ハーンの方に向かうとする(撮影・上田博志)