クスッと笑ってしまう光景に「なるほど」と唸らされた。

 高校野球の季節。休日を利用して、母校野球部の県大会を見に行く機会に恵まれた。気温30度を余裕でオーバーする灼熱(しゃくねつ)地獄の中、緊迫した試合は終盤へ。ある時、好機で凡退した打者がベンチに戻りながら突然、「申し訳ない! 申し訳ない!」と大声で叫んだ。観客席から笑いが漏れ、ナインも思わず噴き出す。重苦しくなりかけていた雰囲気は一瞬で一変した。

 チームが苦しい時、ムードメーカーの力はやはり絶大だ。それはプロ野球、アマ野球問わず、だろう。今年の阪神で言えば、糸井の前向きな明るさと言葉で、心のスイッチを切り替えられた選手は1人や2人ではないはずだ。そんな糸井は18日、右脇腹の筋挫傷で出場選手登録を抹消された。

 昨季までを振り返れば、新井や今成が大声でナインを盛り立てていた印象が強い。ただ今、2人は1軍にいない。西岡かロジャースか、それとも…。誰か新たなムードメーカーに名乗り出るのか、ひそかに注目している。【阪神担当 佐井陽介】