最近になって、名作バスケット漫画の「SLAM DUNK」を読み返した。何度読んでもじーんと来るのが、県大会決勝リーグの陵南戦で途中出場した「メガネ君」こと木暮公延が3点シュートを決めるシーン。花形選手の活躍もいいけれど、チームを陰で支える人物がヒーローになる瞬間には心を動かされる。

 5日、松本での中日戦で巨人寺内崇幸内野手(34)がヒーローになった。延長11回、プロ初のサヨナラホームランでダイヤモンドを一周。本人以上に、首脳陣やチームメートが大喜びする姿が印象的だった。

 守備固めや代走、代打での犠打などでチームを支える仕事人。以前、自らを将棋の「歩」に例えて、途中出場のポリシーを明かしてくれたことがある。

 寺内 監督が棋士で選手が駒だとしたら…。自分は「歩」かなあ。ユーティリティーだから、終盤に張る方の。(坂本)勇人なんかは飛車だと思うよ。ずっと試合に出続ける選手だし。だけど歩だって「と金」になれるし、使い方1つで試合が変わることもある。そういう気持ちで、いつどんな仕事を任されてもいい準備をする歩になることで、チームが強くなると思っているよ。

 控えめな34歳が、プロ初のサヨナラ弾で「と金」になりお立ち台に上がった。ファンとチームメートが普段以上にうれしそうだったのは、日頃の献身を目撃しているからだろう。冒頭で触れた「SLAM DUNK」の湘北高校は、木暮が決めた値千金の3点シュートを足がかりに勝利して全国大会へ出場。巨人が誇るバイプレーヤーが放った1発も、球団11年連続のCS出場へ向けた機運を加速させたに違いない。【巨人担当=松本岳志】