濃いグリーンのネクタイを締めてソフトバンク和田はこの日、福岡空港で搭乗便を待った。明日11月1日。敵地・横浜で先発マウンドに上がる。

 「もう15年も前のことですよ。ははは」。そんな遠い「過去」は忘れてしまったとばかりに笑い飛ばしたが、冷静沈着な男も気持ちの高ぶりはある。03年秋。和田はシリーズで日本一の胴上げ投手となった。阪神との第7戦。内弁慶シリーズと呼ばれた頂上対決に新人左腕がピリオドを打った。

 さて、今年はどうか-。和田にとってDeNAはターニングポイントになった相手でもある。昨年6月8日。交流戦でDeNA戦に先発した。7回を投げ7安打1失点、12三振を奪って白星を挙げた。この年、7勝目の勝ち星だった。直前の6月1日、中日戦では先発で5回8安打、5失点(自責2)KO降板。エース左腕の雪辱登板でもあった。「中日戦で5失点していたし、何とか変えたいと思っていた」。このDeNA戦勝利から和田が変えたのは投球時のプレートを踏む位置だった。それまでは、プレートの三塁側を踏んでいたが、この日から一塁側に変えた。もちろん、今もプレートを踏むのは一塁側だ。

 冷え込む横浜スタジアムに着いて、和田はマウンドの状態を確認した。今日31日の第3戦は武田が先発。一気に3連勝となれば和田に「胴上げ投手」のチャンスが巡ってくる。敗れても再王手をかける登板となる。「右打者も左打者もいいですからね。球場が狭いから、筒香とかの前に走者をためないことですね。胴上げ? ウチはサファテがいるから。ボクはないですよ」。エース左腕は必勝のバトンをしっかり守護神につなぐつもりでいる。【ソフトバンク担当 佐竹英治】