馬場が痛快、清宮斬り!

 12日、青森・弘前で開催された「フレッシュオールスターゲーム2018」で阪神のドラフト1位ルーキー馬場皐輔投手(23)が躍動した。初回、日本ハム清宮幸太郎内野手(19)とのドラ1対決に、空振り三振で勝利。故郷宮城で東日本大震災を経験した馬場にとって、東北での感慨深いマウンドとなった。


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 忘れられない残像がある。「本当に野球どころじゃなかったんです」。

 11年3月11日。宮城・塩釜三中の卒業証書を自宅に置いた馬場は、中学最後のキャッチボールを、父恒彦さんと楽しむ…はずだった。

 「地震が起こって、津波が来て。町が、ぐちゃぐちゃになって…」。卒業したばかりの中学に避難。突然、日常を失った。自宅周辺は浸水。知人の家は津波で流された。数日間の避難生活の末に「自分にできることを探しました。少しでも助けられるなら、動こうと」と思い立った。そこから2週間は民家のヘドロを取り除くボランティアに参加。集合場所の公民館から車で移動するたびに、窓の外を見て、心が揺れた。「(高校の)入学式も延期になりましたし、本当に、野球、できるのかなって」。不安でたまらなかった。

 プロ1年目の今年、フレッシュ球宴は青森・弘前で開催。東北の地に虎の18番を背負って帰ってきた。「宮城と青森って、福岡と鹿児島くらいに遠いんですよ? 青森に行ったこともありません。でも、東北は東北。みんな同じ気持ちだと思います」。

 あの残像とは、一生の付き合いになる。「野球ができなくなる環境を知っているので。こうやってユニホームを着させてもらって、球場で野球ができることは、本当に幸せなことですから」。少し表情を緩めながら、しみじみと話した。【阪神担当 真柴健】