ホークスOBでもある巨人杉内が今季限りでの引退を表明した。地元福岡のダイエー(現ソフトバンク)でスタートし、17年間のプロ人生だった。童顔に似合わず、負けん気が強かった。同僚とのテレビゲーム対戦。負けると、手にしたコントローラーを放り投げていたという。試合中、ベンチを殴りつけた両手骨折も、自らのふがいなさを抑えきれなかった。でも、普段はおとなしく気の優しい男でもあった。

本格的な野球人生の始まりは鹿児島実時代からだろう。母子家庭で育った杉内は福岡・大野城市の実家から野球留学した。「入寮はおじいちゃんの車で鹿児島まで送ってもらいました。入学の時はさびしくなかったんですけどね」。期待に胸を膨らませて名門校の門をたたいた。故郷を離れた寂しさは2カ月ほどで募った。1年生の初夏。休日を利用して帰省した。「6月くらいですかね。休みがあったので福岡に帰ったんですが、あの時はもう絶対に鹿児島に戻りたくないと思いましたね」。ホームシックになった。祖父の車で泣く泣く鹿児島に戻った。

杉内が巨人に移籍した12年、ホークスは苦しい戦いとなった。13年はBクラスに沈んだ。エース左腕の離脱は確かに大きかった。この日、工藤ホークスは楽天最終戦に勝利し、首位西武に3ゲーム差に詰め寄った。逆転Vにキラリと光が差した。と同時に、かつてのエース左腕の引退の2文字は「世代交代」という難題も浮かび上がらせる。ホークス主力は、30歳中盤の選手が多い。勝ち進むチームを見ながら、ふと不安もよぎった。【ソフトバンク担当 佐竹英治】