7年前のドラフト会議で一躍脚光を浴びた男は今秋、現役を退くことを決めた。大嶋匠。10月5日、千葉・鎌ケ谷の2軍施設にスーツ姿で現れた大嶋は、来季の契約を結ばないことを球団から通達された。

直後に報道陣に対応。すがすがしいほどの笑顔を交えながら、丁寧に質問に答えた。「僕としては昨年で戦力外かなと思っていたんですけど、今年1年またやらせていただいて最後までやり切ろうと思って今年取り組んできたので、本当にすっきりしています。今日で、野球は終わりです」。

日本ハムから11年ドラフト7位で指名された大砲タイプの大型捕手は、早大ソフトボール部出身だった。その年は巨人と相思相愛だった菅野を1位指名し、抽選で交渉権を獲得したことも大きな話題だったが、異競技選手の指名は世間を最も驚かせた。

ソフトボールと野球。似てるようで全く違う競技だ。「ボールの大きさ、バット、塁間(の距離)も違う。驚きの連続だった」。それでも明るく練習に取り組み、努力を続けてきた。3年目にはプロ初昇格を果たし、5年目にはプロ初安打。想像だにしない困難を乗り越えて、確かな足跡は残した。願わくば、1軍で本塁打を打つ姿が見たかった。「ありがとうございます。でも、それは、しゃーないです。悔いはないですから」。ここでも笑顔で、プロ7年間を振り返った。

後日、表向きは努めて明るい姿で振る舞っていたことを知った。鎌ケ谷の勇翔寮内では2軍首脳陣や同僚にあいさつをする際、涙があふれていたという。胸の内に秘めていた悔しさもあったはずだ。笑顔を振りまいたのは、最後の意地だったように思う。周囲も大嶋が野球に対して真摯(しんし)に取り組む姿を認めていた。だから温かい言葉が多く掛けられた。「みなさん、本当に自分のことを心配してくれて、ありがたかったです」。これから歩む第2の人生はきっと、努力し続けたこの7年間が、心の支えになるはずだ。【日本ハム担当 木下大輔】