近年のアスリートはトレーニングの知識も豊富で、栄養管理も徹底されており、それによって強靱(きょうじん)な肉体が形成されている。数十年前の選手と比べ、体のサイズや筋力の数値も現代の選手の方が勝っている点は多いと想定される。ウエートトレーニングにおいてもさまざまな器具が次々に導入され、パフォーマンス向上のため重宝されている。

そんな時代でも重りを使わずにトレーニングを行う選手もいる。オリックスのドラフト2位の亜大・頓宮裕真(とんぐう・ゆうま)内野手(22)もその1人だ。181センチ、97キロの恵まれた体格を持ちながら、シーズン中にウエートトレーニングを一切行わないという。頓宮は「自分の体を支えるくらいのトレーニングをしていて、あんまり重たいものを持ち上げたりはしません。柔らかさを意識してるので」と理由を明かした。

トレーニング方法の変革が打力向上につながった。「1、2年の時にベンチプレスをやっていたんですけど、それをやらなくなってからバッティングがよくなりました」。2年春リーグまでは控えに甘んじていたが、同年秋にレギュラー定着。プロ入り後についても「シーズン中は腕立て伏せとかをやります」と話した。

多くの利点も存在する。自体重でのトレーニングを推奨しているトレーナーは「高負荷のトレーニングよりも、フォームを意識しすることができますし、けがのリスクも低下します。ウエートではインナーマッスルを正しく鍛えにくいのが難点です」。野球は体重移動が大事なスポーツであり、「自分の体重を扱うことができるようになることも利点ですね」と説明した。

オリックスの大先輩イチローは鳥取にあるスポーツジム「ワールドウイング」の小山裕史氏が発表した「初動負荷トレーニング」をオリックス時代から継続。しなやかで弾力性に富んだ筋肉を作り出し、45歳となった今も現役を続けている。

高校通算24本塁打、大学通算14本塁打の新長距離砲が、球団のレジェンドと同じく「柔軟性」に重きを置き、プロの舞台でも本塁打量産を目指す。【オリックス担当 古財稜明】