サヨナラ本塁打を放ちお立ち台で「村田さん、みてますか」と、手を振る巨人長野久義(2018年9月28日撮影)
サヨナラ本塁打を放ちお立ち台で「村田さん、みてますか」と、手を振る巨人長野久義(2018年9月28日撮影)

長野久義外野手(34)の人的補償での広島への移籍が発表され、1週間以上が経過した。プロ1年目だった10年から取材を続ける記者にとっては、印象に残る出来事が数多くあり、長野の行動から私自身が学ぶことも多かった。

「気づかい」の男と知られる長野は、周囲には「気を使わせない」男である。昨年1月の宮崎合同自主トレ、長野は記者に「亮磨(野上)、飯は大丈夫ですかね?」と尋ねた。「どうなんですかね?」と答える記者に、「今日の予定、聞いてみてくれますか?」と言った。ここまではよくある話なのだが、最後に「何もなかったら、食事に誘ってくれますか? でも、予定があったら何も言わないでください」と加えた。

長野 自分の方が年上ですからね。亮磨に先輩に誘われたのに、断ったと思わせるとかわいそうですから。こっちが直前に誘ってるし、予定がなければと思って、声を掛けたんです。

野上に予定が入っており、食事は実現しなかった。野上には「今日の夜、何かあるんですか?」と聞かれたが、「移籍1年目だから、どういう予定なのかと思って」と返答した。長野には野上に予定があることを伝えると「僕のことは何も言ってないですよね? ありがとうございます」と感謝された。

今オフ、巨人から2人のチームリーダーが、人的補償で去った。西武に移籍した内海哲也投手(36)が“表”のリーダーなら、広島に移籍した長野久義外野手(34)は“裏”のリーダーだった。遠く離れたアメリカの地で、自主トレ中の長野は何を思っているのだろう。きっと、自分のことよりも人のことを気にかけているのではないだろうか。【巨人担当 久保賢吾】

完封勝利を挙げた巨人内海哲也(右)とハグする長野久義(2018年7月31日撮影)
完封勝利を挙げた巨人内海哲也(右)とハグする長野久義(2018年7月31日撮影)