オリックスから日本ハムへ移籍した金子弌大(ちひろ)投手(35)が紡ぎ出す言葉は興味深い。米アリゾナキャンプ2日目にブルペン投球を行った。練習終わりに、報道陣に囲まれた時に投球フォームのことについて話してくれた。

金子 僕の感覚なんですけど、上半身と下半身は別の動きをしたい。一緒の動きになってしまうと、どうしてもバッターのタイミングになりがちだと思う。独立というか、別々の動きをしたいと思います。

説明はシンプルだが、理解しようとすると難しい。ただ、狙いは理解できた。どうやって打者を打ち取るか。これまでの経験値から仮説を立て、実験して、立証されれば実践する。実験が失敗に終わっても、経験値は増える。地道な作業を繰り返しながら、通算120勝を積み上げてきたのだと思う。

こんなことも言っていた。

金子 チェンジアップは自分のフォームのバランス、タイミングで落ちるか落ちないか。高さによっても変化の仕方が変わってくる。常に低めに狙っているけど、僕のチェンジアップは高低の変化ではない。前後なので。最悪、高くても打者のタイミングがズレてくれればいい。あとは自分の感覚でスピードの差ですね。

この日のブルペンでは「速いチェンジアップ行きます」と捕手の黒羽根に宣言してから投げ込んだ場面もあった。

金子 「速い」と言うことによって腕を振ることにつながる。自分に言い聞かせているということ。そう言ったからには、そうしなければいけないというのが出てくる。「次はボールに行きます」と言えば、ボールを投げなきゃいけない。そういう状況を自分で作るってことは、やっています。

掲げたテーマを実行していくために、自分にプレッシャーを与えながら練習に取り組む。あえて、我々の前で「上半身と下半身は別の動きをしたい」と言った金子が、開幕の頃には、どんな状態でマウンドに立っているのか、とても興味深い。試行錯誤を繰り返す姿やマウンド上での変化、コメントの奥深さにも触れていけるのが本当に楽しみだ。【日本ハム担当 木下大輔】