日本ハム先発の吉田輝(撮影・黒川智章)
日本ハム先発の吉田輝(撮影・黒川智章)

<日本生命セ・パ交流戦:日本ハム2-1広島>◇12日◇札幌ドーム

吉田輝星と日本ハムには、不思議な縁がある。金足農2年夏の秋田大会。小学校時代に世話になっていたスポーツ用品店勤務の細谷裕之さん(48)と、偶然再会した。別の店に移ったと聞き、吉田輝はその「クドウスポーツ」に通うようになった。昨夏の秋田大会で使用したグラブも、同店で発注したもの。「不屈の根性 吉田輝星」。手のひら部分に刺しゅうを施した、こだわりの一品だった。

同店を立ち上げたオーナーは故工藤幹夫氏。82年に日本ハムで最多勝、最高勝率のタイトルを獲得。球団で最後の20勝投手だ。

88年の現役引退後に秋田へ戻り、少年を指導するかたわら、野球用品店を経営していた。16年5月13日、肝不全のため55歳の若さで旅立ち、2人が顔を会わせることはなかった。だが吉田輝は「年が明けるともう来られないから」と、プロ入り直前の昨年末も、同店を訪れてあいさつしている。工藤さんの死後、経営を受け継ぐ妻美智代さん(58)は「同じ秋田出身の選手として縁を感じる。夫も天国から見守っていると思います」。同郷ルーキー右腕の晴れ姿。球団の大先輩も、きっと天国で喜んでいるだろう。【日本ハム担当 山崎純一】

日本ハム時代の工藤幹夫さん(1983年6月2日撮影)
日本ハム時代の工藤幹夫さん(1983年6月2日撮影)