大船渡(岩手)・佐々木朗希(3年)を筆頭に高校生投手が席巻すると見られた今秋ドラフト1位候補に、明大・森下暢仁(4年=大分商)が割って入った。主将、エースで明大を38年ぶりの大学日本一に導く道のりで、力量を発揮。「即戦力ではNO・1候補」という最高評価もプロから続出するようになった。

15年の初秋、当時大分商のエースだった森下を取材した。15年は春夏通じて甲子園に届かなかったが、実力を認められ、U18W杯の高校日本代表に選ばれた。西谷浩一監督(大阪桐蔭)の指揮下で、世界一を目指した。米国に敗れ、準優勝に終わった決勝後、出場選手に卒業後の進路を確認。森下は「4年間大学で体をつくってからプロに進みたいと思っています。進学するつもりです」と語った。だが、わずかな時間差で森下を取材していた後輩が「森下君、志望届出すそうですね」と、プロ希望を本人が明かしたと言ってきた。

森下は決して、いいかげんな態度で取材に答えていたわけではない。「プロに行きたい気持ちはあったんですが…」と明かしていた。大分大会の好投でプロの注目を集め、プロ志望届を出せば上位候補と言われていた。

高校日本代表でプロを目指すチームメートと寝起きをともにし、気持ちも揺れ動いたのだと思う。一方で、今の自分に足りないものも見極めたのだろう。U18W杯のチェコ戦やキューバ戦で好投したが、本来の力量からすれば覇権を争う米国戦で投げる投手。勝負どころで起用されたのは、仙台育英(宮城)・佐藤世那や中京大中京(愛知)・上野翔太郎。当時の森下は、まだ力を出し切ることができなかった。

プロへのあこがれ。現状への見極め。U18W杯決勝後の取材時間の中でもまだ迷って、やっとの思いで進路を語ったのだと思う。明大でも試練はあった。だが大学球界の大エースに成長した姿を見れば、自分で決めた進路を正解にした強さを感じる。森下をどこの球団が射止めるのか。秋のドラフトを楽しみに待ちたい。【遊軍=堀まどか】