20年の春季キャンプが始まった。中日の沖縄北谷球場での1軍キャンプ。第1クールのフリー打撃ではケージを3カ所に並べて選手たちが打ち込む姿も定着している。

キャンプでは落合監督時代に始まった風景だ。関係者とそんな話をしていると、中日で3カ所のフリー打撃を発案したのは、実は落合監督ではなかったという話を聞いた。

「初めて3カ所でフリー打撃をしたのは(高木)守道さんだよ。2軍監督のときにナゴヤ球場でやりだしたんだ。2つしかないケージの間を空けて、後ろにフェンスを置いただけだったけど、マシン1台と打撃投手2人を使ってやりだしたんだ」。

そう振り返るのは、2軍の読谷球場にいるベテランの杉山博行用具担当だ。1月17日に78歳で急逝した高木守道さんは、2代目ミスタードラゴンズとして球団初の2000安打を達成、名球会入りしたレジェンドだ。その高木さんが84年から2年間、中日2軍監督を務めたときに発案したのが3カ所フリー打撃だったという。若い選手たちに、少しでも多く練習を積んでもらうための工夫だったろう。バックトスも自ら練習場所を作って腕を磨いた。アイデアマンの本領発揮だった。

北谷球場の3カ所ケージの向こう、バックスクリーンの上には第1クールに高木さんをしのんで日の丸や球団旗が半旗で掲げられた。自らが発案した練習方法が後輩たちに受け継がれていることに、高木さんも空の上から喜んでいるはずだ。【中日担当 伊東大介】