オリックス荒西
オリックス荒西

真っすぐ突き進む理由がある。オリックス荒西祐大投手(27)が、2年目の躍進に燃える。

「先発ローテーションを守って、1年間を投げきる。それが今年の目標です」

18年ドラフト3位でオリックスに入団。新人年は13試合に登板して1勝4敗、防御率5・57の成績を残した。26歳のオールドルーキーとあり「プレッシャーは感じていました。26歳でプロに入って、結果を残せなかったら…とか考えたりしていましたね。不安もあって、最初は萎縮していた部分もあった。ただ、終盤になって『打たれたらどうしよう』とは思わなくなった。強気な部分が取り戻せたかなと思います」

熊本・玉名工を卒業し、社会人野球の道へ。ホンダ熊本には8年在籍。都市対抗には7度出場し、社会人の侍ジャパンにも選出されるなど、着実に力をつけた。ドラフト候補には何年も名前を連ねた。指名漏れを味わっても、決して諦めなかった。だから今、たどり着いたプロの世界で奮闘できる喜びをかみしめて戦う。

持ち味は強打者の内角にも恐れず投げ込む「攻めの投球」。マウンドで、自身の特徴を生かす。「横変化で勝負。上投げだと縦変化が多めになる。サイドだから左右のコースに投げ分けて。そこから曲げることもできるので、有効に(空間を)使っていきたい」。

横手投げのルーツは地元・熊本にある。天水少年野球クラブで野球を始め「投手になったときに、オーバースローで投げていたらコントロールが悪かった。少年野球の監督がサイドスローだったので教えてもらいました。だから(フォームが)スリークオーター寄りと言われますけど、自分ではサイドハンドと思ってます」とこだわりを見せる。

熊本に、拭えない記憶が残る。16年4月16日、熊本地震で被災を経験。荒西は社会人野球の大会期間中とあり、揺れを感じることはなかったが「茨城からフェリーで熊本に戻ったんですけど…。何も残ってなかった」。がれき撤去のボランティアにも参加。「野球どころじゃなかった」。プレーできるありがたみ、生きる喜びを知っている。だからこそ…。「全力投球で勝利を目指して、優勝に導けるように頑張ります」。その思いは強い。

現在は新型コロナウイルスの影響で練習時間が限られているが「投げること、走るメニューは必ず組み込むようにしています」。さらには自宅でも「指先集中トレ」に励んでいる。「折り紙ですね。チラシを読んで、要らないから捨てるのではなくて、箱を作るんです。手先のトレーニングになります。家にいる時間にこういうこともできるかなと思って始めてみました」。おうち時間も有効活用。きっかけは「年末に実家に帰ったときに姪っ子がやっていたので、それをまねしてやってみました」と愛らしい。

昨季6月22日の広島戦(マツダ)ではプロ初勝利をマーク。「記念ボールは実家にあります。オフに持って帰ったときに喜んでいたので、今年はもっと増やしていきたいですね」。活躍を待つ地元・熊本のため、支えてくれる家族のため-。魂を込めたマウンドから、雄たけびを届ける。【オリックス担当 真柴健】

オリックスに3位指名され喜ぶホンダ熊本の荒西祐大(2018年10月25日撮影)
オリックスに3位指名され喜ぶホンダ熊本の荒西祐大(2018年10月25日撮影)