<ソフトバンク4-3オリックス>◇26日◇ペイペイドーム

ソフトバンクのサヨナラ勝ちを見て、30年前の記憶がよみがえった。90年8月の山形遠征だった。相手はオリックス。みちのく2連戦でホークスは2連敗した。ダイエーホークスとなって2年目。田淵監督の初シーズンだった。阪急から球団を買収したオリックスも、同じ2年目。福岡、神戸を本拠地とする2つの球団は「新生チーム」とあって何かと比較された。試合後の監督会見。報道陣の質問に、田淵監督は激高した。

「オリックスにまだ2勝? そんなの成績見れば分かるんだよ!」と声を荒らげ、その後の質問は受け付けず、移動のバスに乗り込んで行った。その後、オリックスに1勝したものの、さらに5連敗してシーズンを終えた。対オリックス3勝22敗(1分け)と屈辱的な数字が残った。

30年も経てば、立場は逆転する。いや、30年もかかっていない。この日のサヨナラ勝利で同カード12勝2敗。今季のオリックス戦の負け越しがなくなった。27日にも早々と勝ち越しが決まる。猛牛には7年連続して「負け越し」ていない。

オリックスもこのまま「敗者」で終わるわけにもいくまい。シーズン中の監督交代は、チーム浮上のカンフル剤となるのか。キャンプや激励会で「現役生活最後のシーズンと思え」「クレージーなキャンプを。目の色が変わるくらいやれ」…。宮内オーナーは、何度となくチームにゲキを飛ばした。球団、選手は忘れたわけではなかろう。

私事で恐縮だが、駆け出しだったころ、先輩から言われた言葉は今も胸に突き刺さる。他社にニュースを抜かれるたび、彼は冷たく言った。「サンドバッグにも意地があろう」。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

90年10月、近鉄戦でダイエー球団通算100勝を達成し、ナインを迎える田淵監督(左)
90年10月、近鉄戦でダイエー球団通算100勝を達成し、ナインを迎える田淵監督(左)