「松坂世代」最後の野手が、現役生活にピリオドを打った。楽天渡辺直人内野手兼1軍打撃コーチ(39)が今季限りで現役を引退することを決めた。12日、球団が発表した。今季は1軍出場がなかったが、持ち前の明るさでムードメーカー的役割も果たした。トレード、戦力外を経験し2球団をへて、プロの第1歩を踏み出した杜(もり)の都で決断。13日に仙台市内で会見が行われる。

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「来年の山川は間違いなく打ちますよ」。西武から戦力外となった17年オフの西武第2。渡辺直は自信満々に言った。「バッティングの技術もそうだけど、どんな場面でも、自分のスイングをするどっしり感が出てきたからね」。山川は18年から2年連続で本塁打王。“予言”通りだった。

楽天から横浜(現DeNA)、西武と渡り歩いたが、どちらの球団でも慕われていた。筒香、梶谷、栗山、中村、浅村、炭谷、岸…。名前を挙げればキリがない。「自分の中では、何かアドバイスしてあげようという意識は全くない。いつもたわいもない話。でもやっぱり野球選手だから、野球の話になるんですよ。その流れで気付いたことを伝えているだけ」。壁を作らない雰囲気が話しやすさを生む。人懐っこいあの笑顔と豊富な野球知識もあるが、常に会話があるから、時に厳しい指摘をしても受け入れられる。「普段から話してたら、ちょっとした変化とかにも気付くでしょ?」。山川の覚醒をズバリ当てたのも必然だった。

楽天への復帰が決まった時に言った。「まだ、俺の中に野球がしたいって火がくすぶってた。それに改めて気付きましたね」。コーチ兼任となった今季。チームは優勝に向けて踏ん張り時を迎えている。ユニホームを脱ぐと決めても、渡辺直の心の火は、まだまだ燃えているに違いない。【佐竹実】