巨人野上亮磨投手(33)が9日のソフトバンクとのオープン戦(ペイペイドーム)で581日ぶりの1軍登板を果たした。7回から3番手で登板し2回2安打無失点。鋭く落ちるフォークを中心に低めにボールを集め4奪三振。19年10月に負った左アキレス腱(けん)断裂の大けがから復帰し、地元で大きな1歩を踏み出した。

1年前の3月11日、史上初のセンバツ中止が決定した。自身は神村学園時代、創部2年半で05年のセンバツに出場し準優勝。一躍「時の人」となった。「僕はセンバツで今がある。メディアにもぱっと出て、注目されるようになったからね。そういうのがあったからスカウトの目にも留まるし、もしかしたらそういう子がいたかも知れない」と球児がセンバツにかける思いを理解し胸を痛めた。

自身はその頃、復帰に向けてリハビリ組で過ごす毎日。ちょうどスパイクを履いて、ブルペンで全力で投げ始める時期だった。高校球児にメッセージを求めると「ちょっと前の僕と同じ感じですからね。アキレス腱を切って、やりたくてもできない。やれる喜びとか感謝とかが、改めて分かると思う」。好きな野球がやれないつらさは十分に分かる。だからこそ再びプレーできた時に「当たり前」のありがたさを感じてほしかった。

そんな時期を乗り越え実戦復帰した昨季は、1軍登板なし。イースタン・リーグでも18試合(8先発)に登板し、0勝3敗、防御率4・98と思うような結果が残せなかった。オフには1億5000万円減の年俸3000万円で契約を更改。背水の陣で臨んだ1軍マウンドで結果を残した。宮本投手チーフコーチは「ロング(リリーフ)もできる。開幕1軍の可能性も十分ある」と期待する。今度はシーズンのマウンドでたまった思いを白球に込める。【巨人担当 久永壮真】