初回3失点直後のスピード感を確認したくて、甲子園記者席でストップウオッチを手に取った。

3月12日の西武戦、2回表の話だ。阪神藤浪晋太郎は何食わぬ表情で計8球を投じ、「山賊打線」をあっさり3者凡退に仕留めた。この回、投球間隔の最速タイムは9秒を切っていた。

各打者の1球目までにかかる間隔は、打席の入れ替わりもあり参考にしづらい。ということで、3人に対する2球目以降の残り5球を計った。11秒69、8秒72、10秒84、10秒34、9秒56と続き、平均値は10秒23。失点直後のイニングでもテンポ良くボールを離していく姿に、不安や迷いは一切感じられなかった。

まだ3月中旬のオープン戦。当然、シーズンとは1球1球に割くべき時間、重みが大きく違う。さらに今回は分母がたった5球しかない。それでも平均値10秒23はやはり速い。ちなみに、無走者時の平均投球間隔を競うスピードアップ賞の昨季セ・リーグ受賞者は巨人戸郷翔征。その平均タイムは10秒8だ。

登板後、率直に聞いてみた。今まで以上にテンポを意識しているのか? 答えは「否」だった。

「常にどんどんストライクを投げていこうという意識は持っていますけど、投球間を速くしようとはあまり考えていないですね」

無意識のうちにテンポアップされているのであれば、期待はますます膨らんでしまう。

記者は今春、藤浪登板時のスコアブック記入にやや苦戦した。グラウンドと映像を見比べながら1球1球、球種やコース、球速をチェックする。今まで通りのルーティンで油断していたら、何度か次の1球を見落としかけた。

テンポの良さは打者も感じ取っているはずだ。2番手で4回無失点と好投した3月5日のソフトバンク戦。3回2死無走者で3球目を投げようとした時、4番長谷川はたまらず打席を外している。歴戦の強打者も想定外のスピード感があった、ということだ。

もちろん、一概に投球間隔が短ければ正解とは言い切れない。1球1球の「間」を長く丁寧に持つべき場面もあるだろう。何度もサインに首を振ることで打者を惑わせる戦略もある。降雨の中であれば、ボールをこねたり足元の土を直す時間も必要になる。

とはいえ投球のベースにスピード感があれば、野手のリズムに好影響を及ぼすことは間違いない。何より、ハイテンポは投球フォームやスタイルに迷いがなくなった証とも表現できる。

制球難に苦しんでいたころ、背番号19は自分自身とも戦っていた。「投球中にフォームを考えている時点で良くない」と悔しさをにじませていた。それが今はどうだ。「ピッチングをしていて楽しい」という言葉通り、スピーディーな投球間隔からは確かな自信が伝わってくる。

藤浪が初めて開幕投手を任されるメモリアルデーは3月26日。1球たりとも見逃さないよう、いま一度、目とボールペンのスピード感を鍛え直しておかなければならない。【佐井陽介】