「短期」と「中・長期」。楽天石井一久GM兼監督(47)は、GM時代から何度もこの2つの言葉を用いる。目の前の勝利と常勝軍団の構築。一見、相反するように見える二兎(にと)を追う姿勢は、3日オリックス戦のスタメンに表れていた。

投手を含めた10人中プロ3年目以内の選手が6人名を連ねた。内訳は18年ドラフトからは1位辰己が「1番中堅」、2位太田が「9番捕手」、4位の弓削が先発投手、6位の渡辺佳が「7番三塁」。19年ドラフトから1位小深田が「2番遊撃」、4位武藤がプロ初スタメンとなる「8番右翼」。高卒から社会人卒まで幅広い。辰己、太田、小深田、武藤は無安打に終わったが、渡辺佳が適時打を放ち、先発弓削は4回途中1失点と粘投。3-2で今季2度目の1点差ゲームを制した。

指揮官は「思い入れがあるから使っているわけではないんですけど全然」と苦笑いしつつ、GM時代に指名した若手選手の台頭を客観視する。「結果的にその選手が代表として出ることはチームとして望ましいという状況になってきてはいる。僕が前から言うように中・長期的なプランは持ちながら、夏以降ですよね。短期的な強さを求めたいというところはあるので、しっかりと大事にやっていきたいですけど、あくまでも中・長期なところで強い思いがあるので、しっかりと選手が長くやれる環境を整えてあげたいと思います。実際問題、力はつけているので」。

育成契約とともに昨秋横手投げに転向し、3月に支配下に返り咲いた渡辺佑は4日時点で開幕から4試合連続無失点。3日の同戦では打球直撃の影響で降板した酒居に代わり緊急登板。1死二、三塁をしのぎ、1点のリードを死守した。同GM兼監督は「彼がもう1つ上に行くために、ここを乗り切ればチームのためにも彼のためにもなる」と選手の成長とシーズン中盤、終盤での起用を見据えた采配で、結果もつかんだ。

開幕1軍メンバーにはトレード加入4選手、FA加入2選手が名を連ねた。補強組と生え抜き組が各ポジションで切磋琢磨(せっさたくま)し、相乗効果を生む。長丁場のシーズンで何度も訪れる荒波にもまれた先に、石井GM兼監督が目指す「骨太のチーム」が待っている。【楽天担当=桑原幹久】