プロ野球では、本塁打後のさまざまなパフォーマンスが話題を呼んでいる。ソフトバンク松田の右拳を突き上げる「熱男」をはじめ、西武山川の力士のように両手を広げる「どすこい」、ロッテのレアードは好物の「すし握り」。阪神ではサンズの両手を高速でひらひらさせる「ハッピーハンズ」や、マルテの弓を引くような「ラパンパラ」がある。最近ではオリックス杉本が、人気漫画「北斗の拳」に登場するラオウに憧れて始めたという右拳を真上に突き上げる「昇天ポーズ」など、多種多様だ。

現在、広島には本塁打後のパフォーマンスを行う選手は見当たらない。しかしよく見ると、同じ動きを繰り返している選手がいた。今季新加入したケビン・クロン内野手(28)だ。1発後にダイヤモンドを回り、三塁ベースを回る時にヘルメットのつばを触り、ほんの少し頭を下げる。ホームベース手前ではサイドステップを2、3度行い、左足で本塁を踏む。他球団の選手に比べたら少し地味かもしれないが、パフォーマンスと捉えてもいい気はする。

クロンに尋ねたところ、記憶は少し曖昧だったがきっかけを教えてくれた。三塁ベースでの軽いおじぎについては「アメリカはホームチームのベンチが三塁側にあることが多いから、そういう癖がついたのかな」と説明した。

本塁手前で行う動きには、1つの仮説があった。クロンが米国でプレーしていた時に、チームメートが本塁打後、審判に本塁踏み忘れを指摘され、アウトになったことがあったという。「絶対に踏んでいた」と憤ったクロンが直後に本塁打を放ち、「審判に『ちゃんと踏みましたよ』と見せるためにやったのが初めかもしれない」。真相は謎ながら理由はユニークなものだった。

クロンのパフォーマンスは「踏む」を英訳した“ステップオンポーズ”とでも言うべきか。自分に命名センスのかけらもないことはさておき、広島で新パフォーマンスが生まれることに期待して、取材を進めていきたい。【広島担当=古財稜明】