近年、広島の育成出身選手の活躍が目立っている。昨季は大盛が73試合に出場するなど、ブレークを遂げた。今季は開幕直前に支配下選手登録を勝ち取ったコルニエルが、日本球界最速に並ぶ165キロを計測するなど、躍動している。現在チームに6人いる育成選手の中で、成長著しい姿をみせているのが2年目の木下元秀外野手(19)だ。

大阪・堺市出身の木下は、高校は強豪校の福井・敦賀気比に進学した。高校2年時には左腕のエースとして夏の甲子園に出場。しかし左肘を痛めた影響で、高校3年時は外野手に専念。今度は「4番」として夏の甲子園に戻り、3試合で打率5割8分3厘を記録。チームのベスト16進出に大きく貢献した。長打力を期待され、19年の育成ドラフト2位でカープに入団した。

1年目の昨季は、ウエスタン・リーグで60試合に出場し、打率1割8分ながらリーグ4位の7本塁打を記録した。確実性アップを求め、昨オフには母校の先輩オリックス吉田正尚外野手(27)の自主トレに志願して参加した。敦賀気比の東哲平監督(40)に「どうにか連れて行ってもらうように連絡してもらえないですか」と懇願。「僕が求めているものを全て持っている」という大先輩との合同自主トレを実現させた。

パ・リーグの首位打者を独走する吉田正からは、技術面に加え、精神的な部分でも学びがあったという。吉田正から「打撃は気持ち、心を抑えることで、ボールがよく見えるようになる。技術よりも、気持ちを自分の中で整理できるようになるか」と助言を受けた。加えて「打者は10打席で7回失敗できる。失敗するのが当たり前という思いでやっている」という考え方も教わった。一流の極意を学んだ木下は「本当に良い経験ができました」と充実の表情で振り返った。

今季序盤は2軍戦で打率3割台後半をマークし、一時は首位打者に立った。現状3割は切っているものの、2割台後半を維持している。木下は今後の目標について「まずは支配下ですけど、将来的には打撃部門でトップの選手。何年後になるかわからないですけど、本塁打王、打点王、首位打者を取れるような選手になりたい」と大志を抱く。

将来性を感じさせる育成のホープが、マツダスタジアムを沸かせる日もそう遠くはないだろう。【広島担当=古財稜明】