オールスターを見て、ふと「お祭り男」を思い出した。08年9月下旬。すでに引退を表明していたオリックス清原和博内野手(当時41歳)を一目見ようと、京セラドーム大阪へ足を運んだ。当時、記者は14歳の野球少年。終礼を済ませると、プレーボールを楽しみに速足で球場へ向かった。

その日の試合終了と同時に、スタジアムで「夢」をもらった。背番号5の清原氏が、着用していたリストバンドを、一塁側ベンチ上に投げ入れた。遠くに投げたため、ブーメランのように回転し、奇跡的にもキャッチに成功。大勢の大人が、なだれ込んできた記憶が鮮明に残っている。

スキップ気分の帰り道で、リストバンドを左腕につけた。電車を降りても、家に到着しても、しばらくは離さなかった。うれしくて、翌朝の新聞を購入。リストバンドを投げ入れるシーンが、写真で掲載されていた。野球が、また好きになった。

08年10月1日の引退試合は、母親に頼み込んでチケットを買ってもらった。「とんぼ」を歌い終えた長渕剛さんが、ギターを高々と放り投げる瞬間や、清原氏が花束を受け取って涙するシーンに、胸を打たれた。

そんな体験があるからこそ、今月10日に清原氏が、甲子園に戻り、カンテレの地上波テレビ中継に映ったときは、胸がグッと熱くなった。

96年以来25年ぶりVを狙うオリックスは、今季前半戦を首位ターン。あの日から、13年がたった今は“ファン”に感動を伝える役割になった。こんなコロナ禍だからこそ、明るく楽しい話題を届けたい。

あのとき、大熱狂のスタジアムで「夢」を与えてもらった。そんな野球少年たちが、もっと増えたらいいなと、心から思う。【オリックス担当=真柴健】