母校の活躍は、OBにとって何よりの励みになる。8月に2年ぶりに開催された夏の甲子園では、智弁和歌山が21年ぶり3度目の日本一に輝いた。同校出身の広島ドラフト4位小林樹斗投手(18)は、1学年下の代の快挙に「日本一は本当に素晴らしい」と喜びつつ、複雑な思いも抱いていた。

「正直すごいなというのはありましたけど、やっぱり見ていてうらやましい気持ちもあった。この悔しさはプロの世界で取り返すしかないなとは思ってます」

小林が高校3年だった昨年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、春のセンバツ、夏の甲子園が中止となった。小林はセンバツの代替で開催された交流試合で聖地に足は踏み入れた。ただ、3年間目標に掲げてきた「日本一」を目指すことはできなかった。悔しさをバネに、今ではプロとして1軍での活躍を目指し、ファームで鍛錬を積んでいる。

智弁和歌山では、元阪神、楽天、巨人の中谷仁監督(42)から「プロの世界は結果1つで左右される部分もある。目指すならそういう世界だぞ」と常々言われていたという。「プロの練習を教わったり、意識の部分、監督が経験されてきたこと、失敗談であったり、たくさん伝えてくださった。人間性のことも口酸っぱく言われましたし、本当に良い監督だなと思っています」と感慨深げ。プロ1年目を過ごしながら、その都度言葉を思い出し、あらためて恩を感じている。

母校の優勝が決まり、中谷監督にお祝いの電話をした際には「ずっと見ているから。早く結果を出して、自分の立ち位置をつかめるように期待しているぞ」と逆にエールをもらったという。プロ入り前から「1年目から1軍で活躍」を目標に掲げる最速152キロ右腕。智弁和歌山OBとしての誇り、そしてハングリー精神を胸に、1軍デビューへ突き進む。【広島担当=古財稜明】