春季キャンプのブルペンでは、投手の球を見る前に、投手の口と手を見る。投球を横から見る記者が球種を判断するのは難しい。そのため投球前、捕手に指示する言葉やジェスチャーが頼りだ。投手が球種を示すジェスチャーはある程度似ているが、広島森下暢仁投手(24)の「真っすぐ」と言ったときのジェスチャーはほかの投手とは違う。
日本人投手の多くがボールを持って前に少し出すか、人さし指と中指をくっつけて前に出す。だが、森下の場合は人さし指と中指をそろえ、1度潜らせるように下に弧を描く。理由を尋ねると「癖です」と苦笑いしながら続けた。「イメージです。引っかけずに低めに伸びて欲しいので」。その狙いも納得する。ジェスチャーと同じように、伸び上がるような真っすぐが捕手のミットに収まった。
球質は数値にも表れている。今春キャンプも導入された「ラプソード(投球の軌道や回転数などを計測する機器)」。そこで森下の直球は右にも左にも傾かない、きれいな縦回転が9割超という。チーム内でも群を抜く高確率にスコアラー陣も驚いている。ただ、本人は数値を知っても「どれが正解か分からないですけど、そうなるのは自分の投げ方ならそうなるのかなと思います」と表情を変えない。
硬式野球に進んだ大分商1年時にはシュート回転していた球をどうしたら真っすぐに投げられるのか、常に考えながらキャッチボールを続けた。明大でも指導者や先輩から何か学ぼうと取り組んできた。探究心と日々の積み重ね。真っすぐな姿勢が真っすぐな球質をつくり上げたのかもしれない。ならば、投球前に森下が示したジェスチャーのように、投手としてもまだまだ伸びていく-。球数を記しながら、そう感じた。【広島担当 前原淳】




