1歩ずつ進む大切さを、オリックス山本由伸投手(23)から教わった。妥協せず日々頑張る理由を聞いたときだった。

「目標を達成するには、コツコツと進むしか手段はないと思うんですよね。一気に何歩も進めたら、誰も苦労なんてしない。それに、なんて言うのかな…。面白くないですよね?」

和やかな会話だったが、こちらの胸に深く突き刺さった。言われてみればそうだ。すごろくでサイコロを振れば、最大6マス前進でき、有名な「人生ゲーム」でルーレットを回せば最大10マス進める。ただ、それは“遊び”のボード盤の上だけ。人生は楽して進めない。

自身の持つ球団記録が18連勝で途切れた直後の4月下旬。日頃おちゃめで笑顔いっぱいの23歳が、真剣な表情で、地面に視線を落としながら言った。「結果の手前には、1日1日の成果がある。だから(調整日から)1日ずつクリアしていかないと、何事も始まらない。僕の場合、納得できる試合を重ねていかないと、良いシーズンにならない。良い1年が送れないと、最後に振り返ったとき、納得できる人生にならないと思うんです」。しんとした京セラドーム大阪の地下駐車場だからか、余計に胸に響いた。

記者は昨年2月の宮崎・春季キャンプから公式ツイッター(@nikkan_mashiba)を開設した。コロナ禍で現地に行けないファンに向け、記事や写真を投稿した。目の前で起きた出来事、臨場感を伝えるため、できる限りの情報発信を心掛けている。

開設して数カ月が過ぎた頃、山本は「フォロワーさん、増えてきましたね!」と声をかけてくれた。素直にうれしかった。その上で目標もくれた。「やるからには3万人、いかないと!」。当時まだ数千人。想像もできない数字だった。

山本は時折、投稿へのアドバイスをくれる。「あの写真、良い感じでしたね」「次は〇〇選手を載せてください!」。助言から感じるのは「ツイートを見たファンが喜んでくれるか」という共通認識だ。

山本のようにコツコツ、1日1日、ツイートし続けると、認知度が少しずつ上がっていくのを感じた。今年の5月中旬、開設1年4カ月でフォロワーが3万人を超えた。協力的な山本との約束を1つ、守れた気がする。暗いニュースが目立つコロナ社会。楽しさの共有こそ、明るい未来につながると信じている。【オリックス担当=真柴健】