レジェンドへの道を突き進む左腕が、また1つ、新たな節目にたどり着いた。5月21日の札幌ドーム。4-0で迎えた西武戦9回のマウンドには、日本ハム宮西尚生投手(36)の姿があった。言わずと知れた、通算ホールド&ホールドポイントの日本記録保持者。上位打線を3者凡退に仕留め、現役では最多となるプロ通算800試合目の登板に花を添えた。

経験も実績も十分な、球界を代表するセットアッパーだ。チーム内では投手陣の良き兄貴分。これまで、後輩たちにはたくさんの助言を送ってきた。この日、一緒にお立ち台に上がった先発の上沢は「毎年毎年、違う感覚で投げることを恐れない方がいい」という言葉が心に残っているという。それを聞いた時、妙にふに落ちた。

宮西自身、08年のプロ入団後、毎年のようにフォーム修正を繰り返してシーズンに向かってきた。根底には、入団直後に上手投げからサイドへ少しずつ肘を下げていった成功体験があるのだろうが、オフになるたびに必ず、自分自身をリセットすることを忘れない。変化を恐れず、受け入れ、より良いものに昇華する。そうやって、長い間、第一線で戦い続けてきた。

昨季から続く不調の原因が、投球フォームにあると分かって即対応できたのは、宮西だったからだと思う。6月2日には37歳の誕生日を迎えるが、本人は「体は意外に元気なんよ。疲れは出てくるけど、全然、意外に行けちゃうんだよね」と、あっけらかんとしている。老いから来る肉体の衰えすらも、うまく付き合えそうな気さえする。

入団時から昨季まで、14年連続で50試合以上に登板した、正真正銘の鉄腕。このペースを保てば、あと4年ほどで目標とする中日岩瀬が持つ日本記録の1002試合登板に到達する計算だ。「近づくたびに遠く感じる」という大記録への挑戦の結末が、今から楽しみで仕方がない。【日本ハム担当=中島宙恵】