白熱するレースでも、手汗はかかない。JRAのクリストフ・ルメール騎手(43)が、壮絶なデッドヒートを勝ち切る方法を教えてくれた。

今月22日のオリックス-ロッテ戦(京セラドーム大阪)で特別始球式に登場。試合前の円陣では「さぁ、いこう!」とナインに気合注入した。

143試合あるペナントレースの残り数試合と、競馬のゴール前の直線を重ね合わせ、「最後の力の振り絞り方」をどうしても聞いてみたかった。

すると、ルメールは笑顔で答えてくれた。「最後…? 『勝ちたい、勝ちたい…』ばっかり思っちゃうと、それが裏目に出るレースがよくある。なるべく、それを考えずに、今、自分ができることだけに集中すること」。低姿勢で、懸命にムチを入れる姿が思い浮かんでいただけに、驚いた。

「もちろん、勝ちたいんだけど、そこ(ゴール)ばかり見ずにね。冷静に。競馬でも、3、4コーナーでいいポジションにいたり、馬の動きがよかったら、最後の直線で『勝つ、勝つ!!』と。そう思ったら、ミスする。早めに(馬を)出してしまう。一番大事なのは、馬のリズムはどうかな? と落ち着いて確認する。ウイニングポストを見ない方がいい。地道に、冷静に」

ゴール直前ほど、高鳴る鼓動を抑える。血液の流れも平常を保ち、心拍数を上げない。

「ただ、それは大きなレースでは本当に難しい。勝てる、勝てる、勝てる…って思って、体が硬くなってしまう」

今月下旬に史上15人目、現役8人目となるJRA通算1600勝を達成したルメールの言葉だからこそ染みる。

「トップアスリートはメンタルが強いから、できると思う! オリックス、頑張ってください!」

ルメールが騎乗予定の凱旋門賞(フランス)は、日本時間で10月2日に開催予定。オリックスのペナントレース最終決戦も「10・2」と、偶然にも同日の予定。天才ジョッキーの金言を胸に、逆転連覇を最後まで諦めない。ゴールテープを、ハナ差で差し切る。【オリックス担当 真柴健】