シーズンは佳境を迎えようとしていた。9月初旬、西武は首位をキープし、ソフトバンクとの3連戦で福岡に乗り込んだ。ナイター翌日のデーゲーム。試合前の練習中、ペイペイドームの三塁側で辻発彦監督が口を開いた。「この間、すっ転んでさ。肘があばらに入って。たぶん折れてると思う」。珍しく雑談タイムになったため、日課であるランニングについて聞くと、思わぬ答えが返ってきたから驚いた。
直前のホームでのナイター前、走って球場入りしようとした道中だったという。正面からきた自転車をよけようと車道に出た際、転倒した。「おばちゃんを車道に出させるわけにいかんやろう。痛くて寝返りもうてなくてさ。ドクターに見てもらおうかと思ったけど、やめといた。どうせここ(脇腹)だと、固定もできないから」。あえて診断は受けなかった。
その道中は、前日と同じコースを選んで走っていた。「前の日、チームが勝ったからさ、同じところ走ってたんだけどね」と験担ぎも兼ねていた。今月24日で64歳になるとは思えぬスタイルと体力を維持する一方で、勝利をたぐり寄せるためのルーティンとなっていた。
今季限りでの退任が決まり「来年ベンチでドキドキしながら采配を振ることはないですが、ワクワクドキドキすることを見つけないといけないのかなと思います」。激動の6年間に幕を閉じ、85番のユニホームを脱いだ。【遊軍 栗田成芳】




