阪神ドラフト2位の門別啓人投手(18=東海大札幌)には、まずは「524勝目」を目指してほしい。プロ野球が始まって以来、名前に「別」という漢字を使う公式戦勝利投手は過去2人。いずれも、球史に巨大な足跡を残している。合わせて実に、523勝である。

◆別所毅彦

旧制滝川中(現滝川)では41年センバツに出場。試合中に左肩を骨折し、左手をつってマウンドに立った逸話の持ち主だ。

42年に南海(現ソフトバンク)入り。47年には30勝を挙げるなどエースに成長する。49年には巨人に移籍し、52年には自己最多の33勝を挙げた。通算310勝はプロ野球5位。巨人在籍中の221勝は、現在も球団最多である。

◆北別府学

75年ドラフト1位で宮崎・都城農から広島入りした。抜群のコントロールを誇り、赤ヘル黄金時代の大黒柱となる。

82年には、現状では球団最後の20勝をマーク。86年には18勝、防御率2・43で2タイトルを獲得し、2年連続3冠王のバース(阪神)を抑えMVPを受賞した。広島一筋213勝。こちらもチーム歴代1位の輝きを放っている。

ところで、公式戦に登板した、名前に「別」のつく選手はもう1人だけいる。1リーグ時代の阪神の大スター、別当薫その人だ。在籍は48~49年のわずか2年。だが49年には39本塁打を放つなど、ミスタータイガース藤村富美男と双璧をなす強打者だった。

投手としては在籍中に2試合登板。49年8月4日南海戦では、2失点完投ながら敗戦投手となっている。移籍した毎日(現ロッテ)でも52年に1試合投げたが、白星はなかった。

阪神に「別」という漢字を名前に使う選手が所属するのは、別当以来74年ぶり2人目だ。この大先輩は後に毎日や近鉄など4球団で監督を務め、山内一弘、榎本喜八、土井正博ら強打者を次々と発掘したことでも知られる。監督として優勝経験のないまま、唯一1000勝をクリア。1237勝を挙げた名将でもあった。

来季のルーキー門別は、身長183センチの大型左腕だ。「日本を代表する投手になりたい。球速160キロを出したい」と夢も大きい。先輩たちは偉大だが、ひるんではいられない。「特別」「別格」と称されるような、大投手に育ってほしい。

【記録室 高野勲】(スカイA「虎ヲタ」出演中。今年3月末のテレビ東京系「なんでもクイズスタジアム プロ野球王決定戦」で準優勝)