安芸キャンプ打ち上げを翌日に控えた20日。前日19日の特守を背中の張りで途中離脱した佐藤輝明内野手が、特守を志願した。

20日、秋季キャンプでノックを受ける阪神佐藤輝明
20日、秋季キャンプでノックを受ける阪神佐藤輝明

今度は人さし指を負傷したが、三塁での1時間のノックを耐え抜いた。近大時代、同じようにノックを打っていた松丸文政コーチ(42)は、連日の“根性特守”をやり抜いた記事を食い入るように見つめていた。「大学時代は甘ちゃんで、すぐに倒れていた。ヘロヘロになって…。根性はあると思うんですが、体力がなかったですね。記事を見てびっくりしました」。プロで見せた変身に、成長を感じたという。

岡田監督は侍ジャパンの強化試合を経て、12日に安芸に合流した佐藤輝の練習を1日見ただけで、体力がないと見抜いた。「これじゃダメだと(本人が)思うよ」。来季不動の三塁、クリーンアップで起用する構想も「今日の動き見とったら分からへんわ。ほんまに」と白紙に戻すことをにおわせるほど厳しかった。

19日、背中の張りでノックを切り上げ引き揚げる佐藤輝明
19日、背中の張りでノックを切り上げ引き揚げる佐藤輝明

だが、佐藤輝は奮い立った。「甘ちゃん」ではなかった。背中と指の負傷に甘えず、20日の特守で最後まで白球に食らい続けた。その姿に岡田監督も目を細めた。「そら、変わらんとあかんからのお」。松丸コーチも岡田監督が連日佐藤輝に発するゲキに、「本人も危機感を感じていると思います」と心情を察している。

岡田監督の言葉は、期待値が大きいからこそ、1年間フルで戦う体力を鍛えて蓄えてほしいというものだ。近大時代から佐藤輝を見てきた記者も同じ思いだった。だからこそ、特守をやりきり、グラウンドを後にする佐藤輝の表情に、今までにない頼もしさを感じた。

19日、ノックを受ける佐藤輝明
19日、ノックを受ける佐藤輝明

仁川学院2年の秋、プロ野球選手になるために本格的な筋力トレーニングを始めた。近大2年の秋には明治神宮大会で本塁打を放ち、一躍全国に存在感を見せた。そして阪神でのプロ2年目の秋、指揮官が交代し、いきなり厳しい評価を受けた。高校も大学もプロも、2年目の秋がターニングポイントになりそうだ。12月、1月の2カ月の過ごし方が、今後のプロ野球人生を大きく左右するかもしれない。松丸コーチは言う。「このオフ、どんな顔で近大に来るかを楽しみにしています」。貪欲に、目をぎらつかせた姿を待っている。【阪神担当 石橋隆雄】