今年も正月ボケと闘いながら、1年の始まりを過ごしている。さえない表情の記者の目の前で、引き締まった表情で自主トレを行う選手たちの姿が痛いほどまぶしい。プロ野球選手にとって本当の意味でのオフといえる12月が終わり、春季キャンプに向けた準備の1月を迎えた。

例年以上に選手にとって大事な12月を多忙に過ごしたのが、広島上本崇司内野手(32)だ。10年目で初の開幕スタメンを勝ち取った昨季は、コンディション不良や新型コロナ感染による離脱がありながら自己最多94試合出場。開幕スタメンの中堅の他、右翼、左翼、三塁、遊撃、二塁で起用された。打率3割7厘。粘り強い打撃とユーティリティー性でチームに貢献した。

プロ野球は人気商売。もともとファンに愛されるキャラクターだったこともあり、12月はイベントなどに引っ張りだこ。「ありがたいこと。応援してもらったり、呼んでもらったりするうちが華なので、そういう方々に恩返しできるように取り組んでいけたらなと思います」。1年の中でもっとも自由に過ごせる時間を今オフは、支えてくれている人たちと共有した。

一昨年まで自由に使えたトレーニング時間は合間を見つけてつくった。「例年に比べたらちょっと少なくなりましたけど、その分応援してくれている人がたくさんいたので、そういう人たちに結果で恩返しできたら」。自由に使えなかった時間からも得られるものが多かった。

一選手にとっては“試合に出てナンボ”。自己最多出場の昨季は一定の満足感が得られても不思議ではない。ただ、上本はかぶりを振る。「終わってみれば、試合に出ても4位は面白くない。守備固め、走塁で、優勝した時は終わってみればすごい充実感があった。良かったと。やっぱり(役割がどうであれ)優勝した方がいい」。プロ10年目の昨年に経験したのは試合に出続ける難しさだけでなく、支えてくれる人たちの存在の大きさ。上本は今オフ、自主トレでは得られない力を手にしたに違いない。【広島担当 前原淳】