誰もいなくなった午後2時過ぎのブルペンに、ソフトバンク又吉がグラブを持ってやってきた。投球フォームを確認しながら立ち投げで20球ほど投げると、捕手を座らせて約40球。軸足の右足にしっかり体重を乗せる動作で、何度も何度もチェックを繰り返した。

「しっくりこないというか。まだ右足に乗って投げられていないので。僕は投げ込んで作っていくタイプですから」。この日は、1度ブルペンに入っていた。80球を投げ込んでも、納得の感触をつかむことができなかった。キャンプ2日目から3日連続ブルペン入りだが、1日に2度入るのは前日3日に続いて2日連続となった。

プロ通算431試合に登板している10年目右腕でも、試行錯誤の日々だ。ましてや、今季は置かれる立場も変わってきた。一昨年オフに中日からFA移籍。「7回の男」として期待され、移籍1年目の昨季は開幕から実績通り活躍した。前半戦で14ホールド。頼れるセットアッパーとしてブルペンを守った。だが、7月8日の日本ハム戦(ペイペイドーム)で右足を骨折。後半戦は1軍登板を果たせずシーズンを終えた。

さらに球団は今オフ、ロッテで守護神を務めたオスナを獲得するなど、ブルペン陣の競争も激化。斎藤学投手コーチは言う。「去年はシーズン最後も投げることはできなかったし、去年の今とは置かれている状況も違う。決まった場所はないので、又吉も争ってもらわないと」。藤本監督の構想では8回モイネロ、9回オスナは決定的。松本裕、嘉弥真、甲斐野、泉、津森…。台頭してきた若手投手らに負けじと「勝利の方程式」に入るには、厳しい競争を勝ち抜かなければならない。「中継ぎ陣も本当に争いが激しいですし、しっかりやっていきたい」。又吉は力を込め、きっぱりと言った。【ソフトバンク担当 佐竹英治】