「体験しました」とは、おこがましくて言えない“自主トレ体験”だった。

1月、静岡県内でのロッテ選手10人による益田直也投手(33)プロデュース自主トレ合宿を取材した。通称「益田塾」。1年間戦い抜く体力づくりを主に、午前中は体幹トレーニングを中心に、動いて、跳んで、走り抜く。午後は疲労のある中でキャッチボールを含む技術練習に取り組む。

自主トレでランニングメニューをこなすロッテの、左から田村、益田、江村(撮影・足立雅史)
自主トレでランニングメニューをこなすロッテの、左から田村、益田、江村(撮影・足立雅史)
縄跳びを行うロッテ益田(撮影・足立雅史)
縄跳びを行うロッテ益田(撮影・足立雅史)

益田 「ちょっと、やってみますか? 1分出来たら合格ですね」

差し出してくれたのは、重さ3キロのトレーニング用「縄跳び器具」だった。一応、大学までは野球部として活動し、入社後も草野球程度は継続してきた。ここ数年はコロナ禍で活動休止しており、47歳の体は完全になまっているが、「1分くらいなら、何とか出来るかも…」と。若手の横山陸人投手(21)からは「縄を手で回す感覚だったら絶対できません。腕は固定して」とアドバイスももらった。益田“塾長”がストップウオッチを手に見守る前で、大きく息を吐いて、スタートした。考えは甘かった。

ロッテ益田(右)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
ロッテ益田(右)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
ロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
ロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)

リズムを大事にいこう-。そう頭の中でイメージ出来たのは最初の10秒だけだった気がする。益田は数えてくれる「10秒」の声を過ぎると腕が張ってくるのをすでに感じた。「20秒」。太ももや腰に力が入らない。徐々に3キロの縄を回しても地面につかなくなる感覚。そうすると、より腕で回そうとしてしまう悪循環。「30秒」。“塾長”の笑顔が鬼に見えて来た。同時に、体に力が入らない。30秒を過ぎると、縄? ロープ? が足に絡まった。「なんとか1分は…」。再スタート。そこには、生まれたばかりの子馬が、ヨタヨタと立ち上がるような姿でしかなかった。もはや縄跳びではなかったが、ゆっくりではあったが、跳んだ。いや、またいだ?

「60! 終了~」。呼吸困難。全身脱力。両膝に両手を突き、何とか倒れ込むことだけを防ぐことに必死だった。

益田 「ヤクルトの青木宣親さんは、これをいとも簡単に5、6分やるんですよ。プロ野球選手なら3分くらいはみんな出来るよ。コツも必要だけどね」

41歳の青木の身体能力は球界でもトップクラスなのだろうが、「やっぱりプロ野球選手って、超人だなあ」と再認識した。同時に、オフの自主トレ期間こそ、シーズンで成績を残す、はたまた球界で生き残っていけるかが決まる、プロ野球選手にとって、もっとも重要な期間であることを“塾長”に教えていただいた。

約5分後、取材が始まったが、私は呼吸が乱れたまま、まともに会話すら出来なかった。

2月に入り、石垣島でのキャンプで“塾長”と再会した。

益田 「また来年ですね。待っていますよ」

恥ずかしい醜態をさらし、自分自身への情けなさもある。私の自主トレ期間は、春季キャンプから始まっている。そう決意したにもかかわらず、ゴーヤーチャンプルー、ラフテー、ポーク玉子の“私の沖縄料理三種の神器”をつまみに、オリオンビールを飲む私は、まだまだ心から鍛え直す必要がある。【ロッテ担当 鎌田直秀】

ロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニング体験を終えぐったりとする本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
ロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニング体験を終えぐったりとする本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
自主トレを公開したロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)
自主トレを公開したロッテ益田(左)が見つめる中、縄跳びトレーニングを体験する本紙鎌田記者(撮影・足立雅史)