オープン戦もわずかとなり、開幕に向けたカウントダウンが始まった。当落線上の選手にとってアピールのチャンスはそう多くはない。新井新監督を迎えた広島の開幕1軍争いの中で奮闘するのが、高卒2年目の田村俊介外野手(19)だ。

当初は日南1次キャンプまでの帯同の予定だった。最後列の序列からアピールし、沖縄行きの切符をつかんだ。沖縄2次キャンプでは打撃の状態を落とした時期もありながら、新井監督から直接指導を受けるなど復調。若手数選手が降格した3月以降も1軍に残り、オープン戦では本塁打を記録した17日のオリックス戦まで4試合連続打点をマークするなど勝負強さも光る。ここまでオープン戦打率は3割3分3厘だ。

高卒1年目の昨春キャンプでも1軍の紅白戦に参加し、二塁打を放ってインパクトを残した。シーズンは順調な滑り出しから下半身のコンディション不良で戦線離脱。リハビリを中心とした3軍で、患部の治療とともに基礎体力強化を続けた。ケガによって遠回りしたように思われたが、振り返ればあの時間が今につながっているともいえる。当時、特に力を入れたのがウエートトレーニングだった。「誠也さんも、高卒4年目のときに下半身をケガされて、すごくウエートトレーニングをされていたと聞いた」。海を渡った先輩カブス鈴木の逸話が離脱中の心を奮い立たせた。土台の力強さが増したことで、打撃の完成度が上がった。

シーズンが始まればどこかで1軍で代打待機させるのではなく、打席に多く立たせるため2軍に行くことになるのかもしれない。それでも19歳の春に、今季中に戦力となることを示した。西川や菊池をプロに導いた松本スカウトが「高卒でも即戦力」と太鼓判を押した逸材の2年目の飛躍が楽しみだ。【広島担当=前原淳】